さあ、いよいよ年の瀬。高知競馬の年末年始を飾る長距離戦、高知県知事賞と南国王冠・高知市長賞の2大重賞競走の出走予定メンバーが出揃った。そのメンバーは下記の通り。なおこれは12月27日現在の出走予定馬であり今後の変更等は注意されたい。また枠順・騎手は29日に決定する。
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☆第36回高知県知事賞
サラ系OP重賞 2400m 別定
ストロングボス 56 牡7 打越初男
マリスブラッシュ 57 牡4 田中譲二
バンブーウニオン 55 牡5 雑賀正光
シンボリオレゴン 57 牡8 松下博昭
ミヤマリージェント 55 牡6 国澤輝幸
ノボエンペラー 55 セン7 松木啓助
トサノライデン 55 牡8 大関吉明
トップアオバ 52 牝3 国澤輝幸
オウゴンスター 55 牡4 雑賀正光
シルバークロス 54 牡3 松木啓助
ポライトワールド 55 牡6 田中 守
エアレーザー 55 牡5 雑賀正光
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☆南国王冠・第33回高知市長賞
アラ系OP重賞 2400m 別定
エスケープハッチ 58 牡6 田中譲二
メカリジョージ 55 牡9 工藤英嗣
アンドダッシュ 55 牡7 別府真司
マルチジャガー 57 牡5 松木啓助
イケノグレイス 53 牝7 宮路洋一
ホーエイヒカリ 53 牝7 国澤輝幸
ハナサキボタン 56 牡8 雑賀正光
スカイプリティー 53 牝7 打越初男
トサノアバレンボウ 55 牡6 田中譲二
ムサシボウルビー 53 牝4 炭田健二
ファルコンパンチ 55 牡6 大関吉明
シンワテイセン 55 牡8 雑賀正光
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まずは高知県知事賞から、今年のレースについて分析していこう。なんといっても今年はこのレースに向けて条件戦各組の馬がステップ競走からB級以下トライアルへ進み、知事賞出走を目指すという新機軸が行われた。これに伴う賞金や特別出走奨励手当(正式にこういう名称ではないが)はライブドア社の堀江貴文社長が個人として特別協賛してくださったもので、これにより新たな興味の沸く一戦となった事に感謝したい。
さてそのステップからトライアル競走だが、下記のような経緯を辿った。
☆11月19日 E級ステップ
勝ち馬 ジェドエフラー (後方内漸進)
☆11月20日 F級ステップ
勝ち馬 タカノキセキオー(好位4角先頭)
☆11月26日 C級ステップ
勝ち馬 オウゴンスター (好位抜け出し)
☆11月27日 D級ステップ
勝ち馬 シルバークロス (先行押し切り)
(各競走の勝ち馬がB級以下TRへ)
☆12月11日 B級以下TR
師走特別 1600m 良馬場
1着 シルバークロス(好位差し切り)
1分47秒6
2着 オウゴンスター(先行粘るも)
クビ
3着 ポライトワールド(中団漸進)
7馬身
(3着までに高知県知事賞の優先出走権)
(このレースのオンデマンドビデオは http://203.139.216.150/2005121110.asx )
※公開は終了しています
B級以下TR戦で驚いたのは3歳馬シルバークロスの勝ち時計。スローペースの先行策から勝ちパターンに持っていこうというオウゴンスターを手応え十分に差し切って、1分47秒6をマーク。11月20日に行われたA級選抜戦は同じ良馬場マイルで勝ち時計が1分47秒4(勝ち馬シンボリオレゴン)だからほとんど差が無い。ちなみに両レースの前半3Fのラップはというと、B級以下TRが39秒5、A級選抜は38秒5と1秒の差があった。このラップの捉え方は2通りあって、やはりA級選抜の方が厳しい流れで高いレベルだと考えられるが、スローペースから最終的に速いタイムに持ち込んだB級以下TR組もあなどれない。いずれにせよ下級条件からの勝ち上がり組にシルバークロス、オウゴンスターの両馬のような夢のある存在が現れたのは、このステップ競走を行った意義にも繋がるありがたいことである。
さて一方、実績で上回るA級組である。今年は春の重賞・二十四万石賞でストロングボスが圧勝。夏の短距離戦・建依別賞でも僅差ながらストロングボスが地力を見せて優勝し、この時点まではストロングボスの主役は不動であった。
秋になるとそのストロングボスに取りこぼしが目立ち、中でも重賞・珊瑚冠賞は新鋭オウゴンスターと激しい先行争いを演じて早々に勝負圏内から脱落。なんとグレード競走を除けば初となる着外(8着)に敗れてしまった。ここで重賞初制覇を達成したのはシンボリオレゴン。中央では芝の中距離を中心に使われて6勝しているが、高知では下級条件からの再スタートということもあって14連勝をマークするなど快進撃を見せていた。夏場は連戦の疲れからか一時不振に陥ったが、涼しい季節になって復調。高知に来て初めて臨んだ重賞・珊瑚冠賞は4~5番手追走から早め抜け出しで快勝。距離に対する不安はなかろうから、高知県知事賞でも人気になるのは必至である。
☆11月 6日 重賞・珊瑚冠賞
1900m 不良馬場
1着 シンボリオレゴン (早め抜け出し)
2分6秒1
2着 バンブーウニオン (最後方鋭伸)
2馬身
3着 ミヤマリージェント(中団漸進)
8馬身
(特集ページ http://www.keiba.or.jp/live/jusyo/jusyokoko/20051106.html )
※公開は終了しています
また高知県知事賞に向けてはA級のTRも行われた。1800mの距離で争われた高知県山茶花特別である。ここは先行するトサノライデンを2番手から追走したストロングボスが貫禄を見せて抜け出し快勝。2着には3番手から差を詰めた4歳馬マリスブラッシュ。
☆12月 4日
高知県知事賞TR・高知県山茶花特別
1800m 重馬場
1着 ストロングボス(2番手抜け出し)
2分3秒0
2着 マリスブラッシュ(3番手伸びる)
4馬身
3着 トサノライデン (先行粘る)
クビ
(オンデマンドビデオ http://203.139.216.150/2005120410.asx )
※公開は終了しています
高知県知事賞各ステップ、TRの結果を紹介した所でそろそろまとめていく。
実績面ではストロングボスとシンボリオレゴンが双璧。特にストロングボスについては建依別賞2回に二十四万石賞と高知の重賞を3勝している強みがある。更に高知県知事賞は昨年イブキライズアップの2着と連対を確保しており、長丁場にもある程度の適応力を見せている。ストロングボスにとっては自身の体調面と、トサノライデンやオウゴンスターら先行勢との折り合いの方がポイントになろう。トサノライデンのようなある程度のペースで「行ってくれる」馬の2番手というのはTRを見る限り理想的で、前々で運べる利点をどう活かすか、そこに注目したい。斤量56キロは明らかにプラス材料。
シンボリオレゴンは「距離が伸びれば伸びるほどいい」という松下博昭調教師のコメントが心強い。夏場の教訓からか、それほど詰めて使わずに本番に合わせてきた感もある。折り合いが付くこの馬にとっては高知県知事賞独特のスローペースも特に問題はないだろう。ただし超スローペースから残り3Fで各馬が仕掛け合う“乱戦”になった場合、やや加速に手間取るタイプだけに不安は残る。意外なことに中越豊光騎手は高知県知事賞をまだ勝っていない。今年はチャンスをモノに出来るか、その騎乗振りにも注目が集まろう。
マリスブラッシュは4歳の若駒。馬名の意味は“邪気を払う”だそうだ。欧州のマイルチャンピオンでBCマイルにも勝利したスピニングワールドの産駒。
中央では短距離を中心に使われて1000mのダート戦で1勝している。基本的には戦績通りスピードが勝ったタイプだが、近走のように好位から抜け出す競馬が出来れば展開ひとつで沸かせる場面も。
バンブーウニオンはハイペースの展開となった珊瑚冠賞で最速の上がりを繰り出し2着に追い込んだ。上がりがかかるようなら浮上も。中央では未勝利だが、兵庫ではA級でも善戦。高知では前走のA2が初勝利だが、珊瑚冠賞の内容ならここでこそという存在。父方の祖父がシアトルスルーで母方の祖父がイージーゴア。重厚な末脚で金星を狙う。
トウカイテイオー産駒が2頭、いずれも惑星候補として登場する。ノボエンペラーは跣蹄馬、つまり爪の問題で前脚の蹄鉄を打たずに活躍している“はだしの皇帝”である。大井でのデビューは3歳の12月。仕上げに時間が掛かったのは恐らくこの爪の問題ではなかっただろうか。結局大井での2戦は未勝利に終わったが、いずれも勝ち馬と僅差の3・2着。高知で思い切って跣蹄馬としてレースに使ってみたところ、これが走る走る。B級選抜まで突破した所で初の重賞挑戦が昨年の高知県知事賞だったが、ここでイブキライズアップの3着となって素材の確かさを証明した。今年はまた順調さを欠いていたが、この10月からはA級選抜で2・2・3着。相手強化でも食らい付く闘志は父親譲りか。
もう一頭のトウカイテイオー産駒はシルバークロス。この高知県知事賞でもっとも未知の魅力に溢れた存在である。まだ3歳で重賞勝ちも無いが、元々は北海道デビューで緒戦のJRA認定競走を勝ち、2歳オープンのジャングルポケット賞で3着に踏ん張った経験を持つ。中央へも移籍して芝の中距離戦を3戦したが結果は出ず、その後に転入した新天地が高知だった。高知では条件戦2連勝の後、黒潮菊花賞に駒を進めてトップアオバの2着。それでも出遅れながらの先行でゴール寸前まで粘った内容は高い評価を受けた。圧巻なのはD級のステップ競走から進んだB級以下TR。ここで人気のオウゴンスターを差し切ってみせ見事な勝利を飾る。この時騎乗した西川敏弘騎手も「いや、もう手応えが抜群だったからこれは交わせるって自信がありました。この馬はかなりやれるんじゃないでしょうかね」とコメント。本番での騎手は木曜日まで分からないが、1戦毎に力を付けており伸び盛りの馬。当然注目の一頭となる。
そのシルバークロスを破っているのがトップアオバとエアレーザーの2頭。
この2頭も古馬トップクラスとは初の手合わせで挑戦者の立場だが、特にエアレーザーは高知での成績が7戦6勝、唯一負けたレースもインコースのポケットで動くに動けずという展開のアヤに泣いただけに底を見せていない感がある。
最後に忘れてはいけないオウゴンスター。B級以下TRではシルバークロスの2着に敗れたものの、福山遠征で見せたあの走りはなかなかのもの。今回はやはりストロングボスやトサノライデンとの先行争いをどう捌くかがポイントになる。注目の先行策はトサノライデンが強く主張しそうだが、果たして?
ちなみに高知県知事賞は特殊なデータがあって、過去10年に勝った騎手が3人しかいない。鷹野宏史騎手(4勝)、西川敏弘騎手(4勝)、花本正三騎手(2勝)だけなのである。北野真弘騎手が勝っていなかった重賞としても知られているが、前述の通りに中越豊光騎手も未勝利だ。他にもリーディング上位では中西達也騎手や倉兼育康騎手、赤岡修次騎手らも未勝利。もちろん勝てる馬の巡り合わせが大きいのだろうが、一方でベテランの技が光る長距離戦という見方も出来る。果たして今年は初勝利の騎手が現れるか、その辺りに注意してみると楽しみは増えるだろう。
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さて、やや波乱含みに見える高知県知事賞に比べると、南国王冠・高知市長賞の方は“2強対決”という見方が優勢のようだ。メンバーだけ再掲する。
エスケープハッチ 58 牡6 田中譲二
メカリジョージ 55 牡9 工藤英嗣
アンドダッシュ 55 牡7 別府真司
マルチジャガー 57 牡5 松木啓助
イケノグレイス 53 牝7 宮路洋一
ホーエイヒカリ 53 牝7 国澤輝幸
ハナサキボタン 56 牡8 雑賀正光
スカイプリティー 53 牝7 打越初男
トサノアバレンボウ 55 牡6 田中譲二
ムサシボウルビー 53 牝4 炭田健二
ファルコンパンチ 55 牡6 大関吉明
シンワテイセン 55 牡8 雑賀正光
“2強”とはもちろんエスケープハッチとマルチジャガー。前者は昨年度のこのレースの覇者で、1年を通じて最も安定した走りを見せつけてきた高知のアラブ王者である。後者は昨年の福山・全日本アラブグランプリの覇者で全国区での活躍度は前者を上回る。年齢はひとつ違いだが、高知のアラブ競馬晩年の名勝負はこの2頭のライバル対決によって彩られていると言っても過言ではないだろう。昨年度の初対決からのこの2頭の直接対決を並べてみよう。
1月1日 南国王冠2400m
1着エスケープハッチ
2着マルチジャガー
7月3日 A級選抜1600m
1着マルチジャガー
4着エスケープハッチ
10月16日 A級選抜1600m
1着エスケープハッチ
2着マルチジャガー
10月30日 A級選抜1600m
1着エスケープハッチ
2着マルチジャガー
11月13日 A級選抜1800m
1着エスケープハッチ
2着マルチジャガー
11月27日 A級選抜1600m
1着マルチジャガー
2着エスケープハッチ
12月10日 A級選抜1600m
1着マルチジャガー
2着エスケープハッチ
エスケープハッチが不良馬場で伸びを欠いた7月3日のA級選抜が惜しいものの、2頭の直接対決はほとんど1・2着を独占してきたことになる。対戦成績はエスケープハッチの4勝3敗。今回の対決で再びマルチジャガーを下せばリードを守れる。一方マルチジャガーにしてみれば、一番人気で敗れた昨年の雪辱を果たせば対戦成績で五分になる大事な一戦である。
この秋シーズンはエスケープハッチが3連勝の後、現在マルチジャガーが2連勝中。乗り難しいとされるマルチジャガーの陣営が対エスケープハッチ戦用として練った戦法は「控えて中団から後方に位置を取りながらも、勝負所でエスケープハッチより前で追い出す」というもの。今回はより距離の長い条件でそれぞれの作戦がより耳目を集めよう。それぞれが本番に備えて直前のA級選抜を回避。調整も順調に進んでいるようだ。アラブ系馬の生産頭数が激減していつまでアラブ系単独で競走を施行できるか危ぶまれる中、それでもこうして注目対決を含んだ重賞競走が見られるのは幸せな事。存分に楽しみたい。
馬券的には3着争いが注目となろうか。もちろん競馬だから“2強”が絶対のはずもなく、そこに割って入る、あるいは負かしてしまう馬を探すのも楽しみなのだが…。A級選抜の上位常連各馬に加え、切れ味鋭いホーエイヒカリ、しぶとい末脚のメカリジョージ、休み明けを快勝したハナサキボタンと新顔も豊富。なかなか個性派が揃って“混戦模様”の様相を呈している。
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年末年始の高知競馬開催は12月31日から1月3日までの4日間。初日に高知県知事賞、2日目に南国王冠・高知市長賞が登場だ。筆者は31日の高知県知事賞が年末の慌しさを漂わせたムードの中で行われ、そして明けて1日には一転して何かのんびりとしたムードに変わっての南国王冠というギャップを毎年楽しんでいる。たった一日であそこまで劇的に雰囲気が変わるのだから、まだまだ季節感というものは残っているのだな、と感慨深く思う。この年末年始もたっぷりとその季節感を味わいながら、高知県知事賞と南国王冠の2大レースをお伝えしたい。