さあ今度は地元馬の紹介だ。
展開・地の利・コースを知りつくした北野真弘騎手の騎乗というプラス材料はあったものの、リバーセキトバの優勝は高知競馬関係者を勇気付けた結果となった。しかしその後２年はあまりに圧倒的な中央馬のパフォーマンスに圧倒されている。この間太刀打ちできたといえるのは第２回にメイショウモトナリのクビ差３着と頑張ったメイショウタイカンただ１頭であろう。特に昨年は佐賀のシゲノキューティーと共に後方から伸びたトウショウライデンのみが掲示板に載っていただけという内容。今年こそはという意気込みを見せて欲しいところだ。
まずはダイタクカミカゼ（牡８歳・松岡利男厩舎）。ＪＲＡ時代は芝のスプリント戦を中心に使われていたが、ダートでのこれといった実績はない。高知競馬に移籍後は持ち前のスピードこそ発揮したものの勝ちきれないイメージが付き始めた頃にドカンと高知県知事賞を優勝。知事賞を知り尽くした鞍上（鷹野宏史騎手）の導きと大一番に強いスタイルパッチ系（兄はマイルＣＳ連覇のダイタクヘリオス、近親に日本ダービーのカブラヤオー、ダイタクリーヴァ）の血が大仕事をやってのけた瞬間だった。ＪＲＡの頃には直線までインコースの中団でじっと我慢する競馬を得意としていただけに、ちょっとレースの仕掛けどころに馬がとまどっている感がある。直線最後は伸びてくるのだが…という不完全燃焼のレースを繰り返すのはそういう理由ではないかと思うのだが…。大一番黒船賞でまたスタイルパッチの血が騒ぐ事を期待しよう。父は第２回優勝馬テセウスフリーゼでおなじみのジェイドロバリー。ＦNo.8-g。
地元の大将格はもちろんウォーターダグ（牡６歳・大関吉明厩舎）だ。馬名登録こそＪＲＡだったが、デビューを飾ったのは我が高知競ﾅあり、下級条件からじっくりと力をつけて勝ち上がっていく様を多数のファンが共有体験しているという点で準生え抜きと考えてもいいだろう。決して大きな馬ではないがパワーと決め手を兼ね備えており、オープン入りの頃には１８００がベストだった距離適性も序々に短距離にシフトしてきたようだ。今回は展開の助けがあればという条件はつくものの、地元のエースとして好走の期待が集まる。ヌレイエフ系ステートリードンの代表産駒として考えてもグレードレース制覇には大きな意味がある。１９３０年にオーストラリアから輸入されたマラルビの牝系。このファミリーからは朝日杯のハーディービジョンなどが出ているが、近年ではダート短距離路線で活躍したヤングエブロスが目を引く存在。FNo.10-c。
オオギリセイコー（牡４歳・雑賀秀介厩舎）は高知競馬生え抜きデビュー馬。カイヨウジパングに次いで２頭目の三冠馬だが、勲章としては兵庫ジュニアカップ（ＧIII)の４着や黒潮マイルＣＳでウォーターダグと僅差の２着という実績の方を買いたい。とにかく２・３歳時には力の限り頑張って走るというタイプではなく、主戦の北野真弘閧煖齪Jさせられたと聞いている。ただ建依別賞ではＯＰクラスとの力量差を感じたのに、クラス慣れした秋競馬では互角のレースをするあたりは非凡さを感じるところだ。現時点では今回も勝ち負けまでは厳しいだろうが、この馬ならそれを糧にステップアップするという期待も持てる。以外に大崩れはしないタイプだ。
曾祖母はクイーンＳ勝ちのキヨシゲル。母は旧表記の５歳時に開花したハラセイコー、オオギリセイコーもブレークするのは今年なのかもしれない。ＦNo.2-g。
ビッグチェイサー（牡４歳・松木啓助厩舎）は北海道デビューで黒潮菊花賞はオオギリセイコーの２着、高知県知事賞をダイタクカミカゼの２着と秋競馬で気を吐いた若駒だ。高知県知事賞は人気薄で気楽に後方からという条件下のものであり、今回の黒船賞で好走できる要素は見つけにくいのだが、極端な前崩れならといった感じだろうか。母系は名門で、曾祖母Lady Atticaからはサワーオレンジ～シャダイアイバー（エアジハード・ペインテドブラックなどの牝祖）の系統が日本で繁栄している。当然名馬サーアイヴァーを出した一門という事だ。ＦNo.8-g。
最ﾉマチカネホシマツリ。”たられば”を許してもらえるならこの馬が黒船賞に出ていたらというエクスキューズが高知競馬ファンの胸に強くあるだろうと思う。良馬場で単騎先行していたメイショウタイカンをただ一頭追い詰め、交わした昨夏の建依別賞は圧巻だった。少なくとも１４００ｍの距離で地元なら…。運命の神は時として酷な事をする。
後は騎手・枠順が発表され、当日の馬体重・馬場状態が分かれば黒船賞のデータが出揃う。各馬が最高の状態で素晴らしいレースを展開してくれる事を祈ろう。
高知競馬場内実況 橋口浩二
