いよいよ1週間後に迫った「高知競馬春祭り」。的場文男騎手招待チャレンジカップ競走の中止(的場騎手負傷のため)は残念だが、今年もG3の黒船賞を中心に楽しみなレースが揃う。今週は「高知競馬春祭り」に関する情報をゴールポスト通信にアップしていこうと思う。
まずは今回で19回目となる「全日本新人王争覇戦競走」だ。ちなみに全日本は(ぜんにっぽん)と読む。元々地方競馬の新人騎手10名で争われていたが、第10回(95年)にJRAの幸英明騎手が出場。翌年からは美浦・栗東それぞれ1名ずつが参加するようになり、名実ともに日本の新人騎手の登竜門的な競走となった。1レースによる一発勝負だから騎乗馬の抽選に関するクジ運もあるのだが、それでもやはり地元で高い勝率・連対率を残した騎手が上位に来る傾向は見逃せない。また例年このレースは流れが厳しくなって、配当的にも波乱を呼ぶケースが多い。
地方競馬教養センター卒業式では「次は高知で逢おう」という合言葉とともに、それぞれの競馬場へ巣立っていく名騎手の卵たち。これまでの歴代出場者名簿をひもとけば、各地区で後のリーディングジョッキーとなった者もいれば、地方から中央へ移籍した名前も見つけられる。
さあそれでは今年、高知へ集う12名を紹介しよう。
(成績は3月11日現在、地方騎手は地方のみ、中央騎手は中央平地のみ)
ぜひお気に入りの騎手を見つけて、熱い声援を送って欲しい。
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北海道代表
伊 藤 千 尋(いとう ちひろ)
生年月日 1985年9月10日(19歳)
出身地 北海道
初騎乗日 2003年10月7日
初勝利日 2004年4月29日
所属厩舎 伊藤靖則
成績
生涯 275戦 11勝 勝率4.0 連対率 9.5
前年 228戦 11勝 勝率4.8 連対率10.5
☆父が師匠となる親子鷹。新人王争覇戦は北海道代表が第1回から3回まで3年連続優勝(松井孝仁、細川直人、山田和久)。更に第6回も渋谷裕喜騎手が制して合計4人が「新人王」に輝いている。
170センチ近い長身を生かした騎乗フォームも楽しみ。5人目の新人王なるか?
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岩手代表
木 村 暁(きむら さとし)
生年月日 1982年9月5日(22歳)
出身地 宮城県
初騎乗日 2002年4月20日
初勝利日 2002年4月29日
所属厩舎 千葉博次
成績
生涯 705戦 40勝 勝率5.7 連対率12.1
前年 273戦 20勝 勝率7.3 連対率12.5
☆岩手の新人王と言えば村上忍騎手。ウインアレックスというやや制御の難しい馬を駆って見事な優勝を果たしたのが1995年だから、あれからもう10年という月日が経とうとしている。昨年見事な飛躍を見せた木村騎手が勝てば岩手代表2勝目。昨年の勢いを今年度につなげるステップとしても新人王で存在感を見せたい。
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大井代表
有 年 淳(ありとし じゅん)
生年月日 1984年11月19日(20歳)
出身地 神奈川県
初騎乗日 2002年4月9日
初勝利日 2002年6月14日
所属厩舎 矢作和人
成績
生涯 640戦 43勝 勝率6.7 連対率13.9
前年 200戦 19勝 勝率9.5 連対率17.5
重賞1勝
04.11.11 ハイセイコー記念(トウケイファイヤー)
☆南関東、中でも大井競馬所属の新人騎手が頭角を現すのは大変な事だ。しかし昨年はハイセイコー記念を制し重賞初勝利を挙げるなど成長著しく、勝率・連対率も一流のそれに近付いてきた。過去4人の大井代表は真島大輔騎手の2着が最高位。ここは大井代表初の優勝を手に入れたいところだろう。
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川崎代表
山 崎 誠 士(やまざき せいじ)
生年月日 1984年7月29日(20歳)
出身地 神奈川県
初騎乗日 2003年10月27日
初勝利日 2003年10月28日
所属厩舎 山崎尋美
成績
生涯 768戦 65勝 勝率8.5 連対率17.3
前年 574戦 54勝 勝率9.4 連対率17.1
NARグランプリ2004 最優秀新人騎手
☆代々の競馬一家を継ぐ形でこの世界にデビュー。成績が示す通り抜群のスタートを切っている。勝負服は赤一色という珍しいものだが、またなんともこの色が似合うジョッキーだ。NARGP表彰を引っ提げての登場となる。川崎代表が勝てば第5回の岡村裕基騎手以来2度目の優勝だ。
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笠松代表
山 田 順 一(やまだ じゅんいち)
生年月日 1986年9月25日(18歳)
出身地 神奈川県
初騎乗日 2004年4月5日
初勝利日 2004年4月6日
所属厩舎 藤田正治
成績
生涯 456戦 31勝 勝率6.8 連対率12.3
前年 355戦 25勝 勝率7.0 連対率13.2
☆デビューしてまもなく1年という山田騎手。神奈川出身ながら中学時代に行った乗馬スクールで「馬乗り」のとりこに。憧れの安藤勝巳騎手と同じ場所でデビューを飾って、さあどこまでその背中に追いつくか。笠松代表は意外にも新人王未勝利。山田騎手の初勝利で笠松の名前をまた存分にアピールしたいところだ。
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兵庫代表
大 山 真 吾(おおやま しんご)
生年月日 1984年2月14日(21歳)
出身地 大阪府
初騎乗日 2003年10月7日
初勝利日 2003年10月16日
所属厩舎 薮田勝也
成績
生涯 952戦 81勝 勝率8.5 連対率17.9
前年 633戦 50勝 勝率7.9 連対率17.4
重賞1勝
04.7.14 菊水賞(ラガーヒトリタビ)
2004 日本プロスポーツ大賞 新人賞
☆小牧太、赤木高太郎といったトップジョッキーがJRAへ移籍し、なおかつ岩田康誠騎手もという流れの中で兵庫に現れたスター候補生がこの大山騎手だ。騎手の激戦区と言われる兵庫で、今回の出場騎手の中で最高勝利数をマークして日本プロスポーツ大賞、地方競馬部門の新人賞に輝いている。兵庫代表はこれまで藤川洋一郎、清水貴行、西川進也の3騎手がこのレースを制している。
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福山代表
松 井 伸 也(まつい しんや)
生年月日 1985年1月15日(20歳)
出身地 広島県
初騎乗日 2002年4月13日
初勝利日 2002年4月13日
所属厩舎 桑田忠規
成績
生涯 938戦 53勝 勝率5.7 連対率13.3
前年 339戦 27勝 勝率8.0 連対率17.1
☆地方競馬の騎手にとって乗り鞍の数は大きな勲章である。小回りの競馬場で場数をこなすというのは、他では得られない緻密な騎乗技術をその体に刻み込んだ証であるからだ。競馬一家に生まれた、しかし「何よりも馬が好きだからと騎手の道を選んだ理由を語った少年は、一体どれだけの技術を身に付けたプロフェッショナルになったのか?久保河内健騎手以来2度目の福山勢制覇もかかる。
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荒尾代表
松 島 慧(まつしま さとし)
生年月日 1983年7月1日(21歳)
出身地 熊本県
初騎乗日 2002年4月9日
初勝利日 2002年4月16日
所属厩舎 松島壽
成績
生涯 711戦 55勝 勝率7.7 連対率15.9
前年 249戦 19勝 勝率7.6 連対率15.3
☆小さい頃から馬を見て育った「肥後もっこす」は尊敬する騎手として父・壽(ひさし)さんとオリビエ・ペリエの名前を挙げた。そしてその身にまとい共に戦う勝負服、そのデザインに彼は父と同じ柄を選んだのである。父子が一緒に、その象徴としての勝負服には他人が入り込めない絆を感じる。そして今回、“2人”は荒尾勢として後藤孝鎮・矢野猛の2騎手に次ぐ3勝目を目指す戦いに臨む。
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高知代表(地元枠)
永 森 大 智(ながもり たいち)
生年月日 1986年11月8日(18歳)
出身地 高知県
初騎乗日 2004年10月10日
初勝利日 2004年11月28日
所属厩舎 雑賀正
成績
生涯 158戦 6勝 勝率3.8 連対率9.5
前年 89戦 3勝 勝率3.4 連対率6.7
☆デビューしたのが昨年の10月だからまだまだキャリアが浅いのは事実。しかし永森騎手が地元枠という括りに収まらない大物の雰囲気を持っているのもまた事実である。地方競馬教養センターでの模擬レースでも1着となった持ち前のセンスはこれから開花時期を迎えるところ。西内忍騎手以来二人目の地元勝利が託される。
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荒尾代表(優秀女性枠)
岩 永 千 明(いわなが ちあき)
生年月日 1982年8月3日(22歳)
出身地 佐賀県
初騎乗日 2004年4月28日
初勝利日 2004年5月26日
所属厩舎 幣旗吉治
成績
生涯 256戦 29勝 勝率11.3 連対率25.0
前年 189戦 22勝 勝率11.6 連対率26.5
全日本レディース招待(荒尾2004.10)総合優勝
☆今回新設された優秀女性枠で松島慧騎手とともに荒尾から新人王へ登場する紅一点。乗馬から転じて騎手の道へ進み、見事にプロデビューを果たした根性の持ち主で、上記の成績を見ればその実力も一目瞭然だ。先輩女性騎手を招待して行われた全日本レディース招待の優勝でますます注目度上昇中。過去2着が最高という女性騎手の初優勝なるか。
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JRA・美浦代表
石 橋 脩(いしばし しゅう)
生年月日 1984年4月3日(20歳)
出身地 東京都
初騎乗日 2003年 3月 1日
初勝利日 2003年 3月 29日
所属厩舎 柴田政人
成績
生涯1282戦 66勝 勝率5.1 連対率11.0
2003年 民放競馬記者クラブ賞(関東新人騎手賞)
☆先日、引退を発表した岡部幸雄騎手の同期には福永洋一元騎手や柴田政人現調教師がいて馬事公苑・花の15期生と呼ばれた。新人王争覇戦では、父が生まれ故郷の競馬場で見守る前、福永祐一騎手が2着に追い込んだ第11回のような世代を越えたドラマも生まれている。岡部騎手の引退は競馬史のひとつの区切りであるが、そこでまた柴田政人騎手の現役時代を語るのが競馬ファンの醍醐味であったりもする。若き日にアローエクスプレスの乗り替わりという悔しさを乗り越え、後に大きく花を咲かせた師匠は、今度は愛弟子に何を伝えていくのだろう。色々な条件下で機転を利かせながら結果を出すことを求められるJRAの新人ジョッキーとして、石橋騎手は十二分なスタートを切ったといえるだろう。3月12日には中山5Rで自厩舎の馬(5番人気)を鮮やかに逃げ切らせ、周囲を唸らせている。師弟のドラマはまだ始まったばかりである。
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JRA・栗東代表
長 谷 川 浩大(はせがわ こうだい)
生年月日 1983年11月19日(21歳)
出身地 京都府
初騎乗日 2003年 3月 1日
初勝利日 2003年 3月 1日
所属厩舎 中村均
成績
生涯 971戦 65勝 勝率6.7 連対率12.2
重賞1勝
2004年 福島記念(GIII) セフティーエンペラ
2003年 関西放送記者クラブ賞(関西新人騎手賞)
2004年 フェアプレー賞(関西)
☆黒船賞にJBCスプリントの勝馬マイネルセレクト(武豊騎手騎乗予定)を送り込む中村均厩舎から、新人王にも長谷川騎手が登場する。すでに条件交流で高知競馬での騎乗は経験済みで、一発勝負の新人王争覇戦には大きなファクターとなるかもしれない。中央競馬での最初の騎乗でいきなり白星を挙げる辺り、何か大きな事をやってくれそうなムードのある騎手である。今年は何と言ってもシンメイレグルス(牡3歳・中村均厩舎)とのコンビに注目。ダートでの新馬・特別を連勝、芝のきさらぎ賞こそ大敗だったが、ダートグレード戦線では相当やれそうな器だ。