平成15年度の高知競馬が開幕を迎える。投票システムの入れ替え作業等で14年度の最終日から20日ほど間隔が開いたが、この間に一部馬場の改修を行うなど新年度に向けて準備を進め、12日の開幕日を待つだけとなった。
今年度のゴールポスト通信では、主に今後の高知競馬のあり方について、ひいては競馬というものの目指すべき方向性について「高知競馬のレース実況担当」という筆者の立場から、公開しうる限りの情報を提示しつつ綴っていこうと考えている。周知の通り今年度の高知競馬については「単年度収支の均衡」を前提に開催が行われる、という昭和34年の高知県競馬組合設立以来初めての状況を迎えた。しかしこの「単年度収支の均衡」という無味乾燥な表現も、現場では正に血肉を削っての努力を伴い実現を目指すわけであり、で、あるならばこの努力や情熱を世に知らせ、また無にする事のないよう伝えていくのもまた筆者の役割だと感じている。行間にあるものもぜひ汲み取って頂きながらお付き合い願いたい。
さて今年度の最初は投票賭式、番組編成等にも新味の出た新年度の高知競馬について「観戦ガイド」という形式で紹介をしていこう。
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☆日程について
平成15年度の本場開催は19開催で98日を予定している。基本的に土日開催となり土日を3回組み合わせる6日間開催と、祝日などを組み合わせる3日・2日の5日間開催がある。6日開催では1日10R、5日なら11Rという考え方だ。4月から6月に関しては「5月31日、6月1日の土日を除いて全ての週末に開催がある」と考えれば把握しやすい。またゴールデンウィークは子供の日を組み合わせた5月3・4・5日に開催される。
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☆重賞競走等
重賞・準重賞の顔ぶれは昨年度から変更なし。
サラ系古馬重賞
二十四万石賞・建依別賞・珊瑚冠賞・
高知県知事賞・黒船賞
(準重賞)
(四万十特別・横浪特別・足摺特別・
だるま夕陽特別・龍河洞特別・黒潮乙女特別)
サラ系2歳重賞
金の鞍賞
サラ系3歳重賞
黒潮皐月賞・高知優駿・黒潮菊花賞
(準重賞)
(青葉特別・高知新聞杯・若葉特別)
アラブ系古馬重賞
南国桜花賞・南国王冠高知市長賞
(準重賞)
(南国乙女特別・山茶花特別・土佐みずき特別)
アラブ系2歳重賞
銀の鞍賞
アラブ系3歳重賞
マンペイ記念・南国優駿・荒鷲賞
(準重賞)
(アラブ3歳特別(春)・(秋)・弥生特別)
JRA条件交流
桂浜盃・黒潮盃・はりまや盃
第18回全日本新人王争覇戦競走は10月13日(祝月)に予定されており、限られた条件の中でも新人王や黒船賞を継続させようという意思は大きく評価されるところ。なお全体の賞典奨励費(競走賞金・手当等)は前年度後半に準じる数字で、平場競走での本賞金は内訳の見直しで1割増となっている。
サラブレッド系一般戦の格付けは従来のA~E級までから、F・G級を加えてA~G級の7級編成と変わった。下級条件のD・E級を更に細分化し、よりきめの細かい番組編成を可能にするためとの事。アラブ系はD級をなくしてA~C級の3クラスとなった。
入厩頭数については漸減が認められるが、特にアラブ系の減少が目立つ。今年度は3歳重賞も現状維持となったが、JRA補助馬制度による購買馬がなくなればいずれ見直しが避けられない。この件とは別だが、そろそろ珊瑚冠賞辺りはアラブ系との混合重賞にしてみるのも面白いかと思う。JRA条件交流・龍馬盃の名前がないが、年間3度の条件交流という事が先に決まって、そこで「龍馬盃」というとっておきの名前を将来導入されるレースのために留保したという事ではないかと考えられる。
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☆注目の馬
サラブレッド系古馬…
なんといっても12連勝中のイブキライズアップ。
中央未勝利(1戦0勝)から高知緒戦こそ3着ながら、その後は好時計連発で破竹の快進撃。敵は骨膜炎など自らの体質面のみ。イブキマイカグラの産駒で、叔父には同じく中央未勝利から新潟で頭角を現し、平安S2着と借りを返したオーディン。新年度初登場は4月27日のB級戦の予定。前走の騎手招待競走で騎乗した明神騎手によると「まだちっとも真面目に走ってないですね。周りの馬をなめてかかってるようで、ハミを取らないまま勝負所でゴボウ抜きするんですから、末恐ろしい馬です」との事。
アラブ系古馬…
こちらも連勝中の馬だが、古豪ダスティーの復活ぶりは見事。5連勝目となった前走は南国桜花賞TRの土佐みずき特別だったのだからこれは本物。元々の実績を考えれば南国桜花賞でも当然本命視される馬。
サラブレッド系3歳…
混戦模様から黒潮皐月賞TRを制したのがワイエスジュリアン。雑賀秀介調教師によれば「まだまだこんなものではないはず」と期待も高い。一方未勝利馬だが、高知競馬ファンの注目を集めるのがトサモントローズ。高知の女傑イージースマイルの初仔だが、どうも奥手らしくこれからの成長を見守りたい。
アラブ系3歳…
その大物ぶりが厩舎でも評判のエスケープハッチが重賞戦線で中心的存在となりそう。器用さと言う点では遅れをとるものの、スピード値・パワー共にナンバーワンの地力を示している。将来楽しみな大器だ。
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☆騎手
昨年度のリーディングジョッキーは中越豊光騎手(4度目)。念願だったナムラコクオーでの黒船賞出走も実現し、昨年の成績は文句のつけようが無い。
2位には西川敏弘騎手、悲願のリーディングジョッキーへ今年度の挑戦が楽しみだ。100勝を越えたのはこの2人だけで、以下80勝台での3位争いは後半の猛ラッシュで中西達也騎手が制したが、倉兼育康騎手の成長も見逃せない。
また宮川実騎手や古川文貴騎手の生きの良さも目立った14年度。新年度となってまたこういった成長株が現れるのも楽しみだ。
一方で14年度は北野真弘騎手(兵庫へ移籍予定)を始め徳留康豊騎手(金沢へ移籍予定)、山北隆士騎手(鹿児島の育成牧場へ)、戸梶由則騎手(松岡厩舎の解散に伴い引退予定)らが高知競馬を離れ、今年度は17名でスタートする。
(50音順) 14年度 通算成績
赤 岡 修 次 50勝( 463勝)
上 田 将 司 30勝( 51勝)
緒 方 洋 介 31勝( 88勝)
堅 田 雅 仁 ※31勝( 65勝)
川 江 光 司 23勝( 116勝)
川 添 明 弘 4勝( 118勝)
倉 兼 育 康 81勝( 425勝)
鷹 野 宏 史 42勝(1861勝)
中 越 豊 光 129勝(1177勝)
中 西 達 也 84勝(1126勝)
西 内 忍 31勝( 504勝)
西 川 敏 弘 106勝(1352勝)
花 本 正 三 71勝(1810勝)
古 川 文 貴 37勝( 92勝)
宮 川 浩 一 ※17勝( 45勝)
宮 川 実 62勝( 143勝)
明 神 繁 正 48勝( 432勝)
※年度成績には益田競馬場での成績含む
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☆投票賭式
前年度までの5賭式から3賭式にリニューアルされる。
単勝式・馬番連勝複式・馬番連勝単式 の3賭式で、これが丁度本日9日の船橋競馬場外発売からスタートした。思い切った賭式の集約には英断とする声や、多賭式時代に…という声も含めて賛否があろうが、投票総数の分散化はオッズそのものの「うま味」をなくす傾向も認められており、現状での選択はやむを得ない部分がある。やはり総投票金額(ずばり売上)の増加を果たしてこそ、次のステップに進めるものと前向きに捉えたい。
「馬単」はこれまで導入が熱望されていた賭式で、枠単はあっても馬単がなかったこれまでのジレンマが解消される。もちろん高配当に関しては言うまでもなく、穴馬を見つけたときの狙い方もこれまでとは違うスタンスで臨む必要が出てくるだろう。売上割合についてはふたを開けてみないと分からないが、恐らく馬複を上回るシェアとなるのではないだろうか。だとすれば、本命サイドのオッズが上昇し、当然「本命から少しずれれば」という狙い方、そして思い切って穴馬から万馬券狙いといった攻撃的な考え方も面白くなる。ちなみに12頭立ての場合の組み合わせ総数は132通り。これまでの馬複66通り、枠単60通り(いずれも12頭立て)に比べて倍増している。
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☆エトセトラ
個人協賛競走が大変好評だ。毎開催沢山の申し込みを頂いていて、日程によっては3レースが重複するケースも出てきている。いずれは丸一日を協賛できる「○○○デー」といったスタイルでのタイアップなども考えてみてはどうだろう。いずれにせよ地域、あるいはファンと密着したスタイルの競馬に対して努力を重ねる事は大変価値のあることだ。
平成15年度の船出を迎える高知競馬。何よりも競馬の原点を見失わないように、そしてなおかつ順調な航海を進めていけるように願いたい。そしてまたその航海のクルーの一員として、ここをご覧の皆さんにも参加してもらえれば幸いだと思う。