高知競馬に3億円を! ~前篇~

 2003年の日本ダービーが決着を見た。2番手でぴたりと折り合うゼンノロブロイには絶好の展開だったが、さすがは皐月賞馬ネオユニヴァース。4コーナーから直線へ出て行くところで見せた瞬発力と、長い直線を頑張り通した精神力にはダービー馬にふさわしい貫禄を見た。それにしても”競馬”という娯楽の持つ魅力が象徴されたシーンだ。わずか2分30秒足らずの間に数え切れぬ夢が交錯する。東京競馬場の12万人もの観客、社台レースホースの40人の出資者の皆さんはもちろん主役であろうし、同世代のサラブレッド8000頭以上の生産・育成・調教に関わった人々、振り返れば明治から連綿と続く競走馬生産の歴史の上に第70回の東京優駿があると思えば感慨も深くなる。それにしても印象的だったシーン。まだ20歳の頃に日本の土を踏んだ(高知競馬にも!)イタリアの若きトップジョッキー、ミルコ・デムーロが府中のダービーを制してインタビューを受け、そこで中田英寿選手のイタリアでの活躍を今日の自分になぞらえる日が来るとは…。しかも3着馬ザッツザプレンティの鞍上には安藤勝巳騎手。わずか10年前のウイニングチケット優勝の頃には想像もできなかった状況が続々と生まれている。これなら2013年には何が起きていてもおかしくはないと思えてくる。それにしてもさすがは”競馬の祭典・ダービー”である。古馬の選手権とは一味違う華やかさを存分に堪能させてもらった。

さて一方、地方競馬の情勢は益々芳しくない。
「出来高払い制」と名づけられた我が高知競馬のような規模縮小策も、また逆に施設と競走体系を整備した主催者にあっても入ってくる情報は冴えないものばかり。中津・新潟・益田・足利と続いた廃止の波はとどまる所を知らず、わずかな主催者を除いて廃止の選択肢を持っていない場はなかろう。このまま策も無くメルトダウンを起こしてしまうのならば、競馬法施行以降の地方競馬(一部を除くが)の総括が「賭博罪の適用を免れるというアドバンテージ以外に何も無かった」という恐ろしい結末になりかねないのだ。これでは何のための地方競馬であったか、主催者である地方自治体にとっても、厳しい条件下にあっても日々競馬という物語を紡ぎ続けた競馬関係者にもあまりに空しい結論だ。
その結論を前提に改めて「思考停止」に陥れば、大都市圏以外の土地に”競馬場がない”という環境を作るのは簡単だが、果たしてそれは何者かに利益を与えるのか?日本の競馬が”ダービーの華やかさ”を保ち続けるために、何かまだ出来ることがあるのではないか?馬産を伴わない競馬が日本人の心を捉え続ける事が可能なのか? 

 ちなみに現状で最も各主催者を悩ませているのは「想像を越えるレベルの売得金額の低下」だ。実はピーク時との比較で言えばJRAでさえ4分の3に落ち込んでいるわけで、ある程度の売上げ減少については平成不況のせいだと考えていい。ただしこうなってくると、その主催者の体力が物を言う。近年、成功しているビジネスはそのほとんどがスケールメリットを生かしたものであり、商圏が狭ければ狭いほど、商圏内人口が少なければ少ないほど不利になる。更にエンターテイメント産業としての競馬の2本の柱、「面白いレース」と「施設・広報戦略」は予算規模が小さくなればなるほど”細く”なる。そうなれば当然”柱”の細い主催者は売上げの減少に拍車が掛かる。つまり体力のあるなしによって彼我の差が大きくなっていくという理屈である。

 続けると、昨年10月に筆者が当コラムに書いた「競馬規模の縮小によって生き残りを図るという試みは失敗に終わった」という言葉には根拠がある。簡単に説明すると、JRAの場合が(分かりやすい概算の金額とする)

1着賞金の最低額   400万円
馬一頭の預託料月額   60万円

という数字だとする。一方高知競馬では

1着賞金の最低額    11万円
馬一頭の預託料月額   13万円

という数字だ。賞金が約40倍なのに対して預託料は4倍強でしかない。つまり競走馬が生き物であり、えさを食べ、世話をする厩務員がいなくては文字通り”飼養”出来ない存在である以上、預託料を40分の1には出来ないのだ。
競馬における規模縮小の限界点はこの辺りのコストに大いなる関係があろう。
 
 上記の内容をもう少し詳しく考察するために、高知競馬の15年度当初の賞典奨励費について説明しておこう。(当初試算の数値)

年間賞典奨励費総額
9億4971万5040円

5着以上本賞金
3億2162万0000円(33%)
出走手当
4億6912万0000円(49%)
諸手当等
1億5897万5040円(18%)

(出走手当てについては黒船賞、新人王争覇戦については別だが、その他はすべて一律一頭当たり5万円となっている)

 全体の中で出走手当が占める割合には驚かれたかもしれないが、年間単純に100日開催で10Rで10頭立てと考えれば分母は1万という数に達するわけで、生き物である競走馬を扱う以上ここが膨らむのはやむをえない。もちろん5万円という金額は相当な削減をした結果である。この出走手当をベースに考えれば高知競馬の馬主各氏、そして厩舎関係者には頭が下がる。

 しかしここまで頑張っても今なお収支均衡へは厳しい戦いが続く。規模縮小と歩調をあわせるように売上減が起こるのだ。営業経費の削減も当然行われている(例えば一番金額の嵩む地上波広告などが減っている)から、売上げ増は正直難しいわけだが、高知競馬としてもかなり売上げ減を見込んだ目標額を設定していた。実際、昨年度までの赤字幅を考えれば現状は健闘の部類に入るのだが、それでも赤字を認めない方式になっているがゆえに今後が厳しい。やはり規模縮小をもって競馬事業の収支を均衡させるという考え方には限界があった。自助努力としての有効な手段には計画中の場外発売所建設などが残ってはいるのだが、
 
 高知競馬の今後には、別の視点が必要だ。

 高知県、市(議会)は「雇用を守る」という観点から累積赤字、施設の償還に税金を投入するという決断をしてくれた。平成14年度終了時点での高知競馬の累積債務は0である。
 高知競馬関係者は、上記したような厳しい条件の中でも必死に持ち場を守っている。問題とされるキャッシュフローについても、現在第3回開催終了時点で1000万円程度の赤字であればあと一押しで相当な改善にこぎつけられる可能性がある。

 今回を含めて3度にわたって「高知競馬に3億円を!」というテーマを展開してゆく。文字通り、年間3億円の補助金を高知競馬に提供して頂きたい、という意味だ。関係者サイドの一人である筆者が訴える内容にしては直接的なタイトルかもしれないが、敢えてこう書かねばならない。このテーマに意義があり、また高知競馬に与えられた時間が少ないと思うからだ。ぜひ沢山の方に読んでもらって、今競馬社会が高知競馬を援助する意味合いについて考えて頂きたい。

 中篇では益田競馬の元馬主会長が筆者に語ってくれたある言葉から、そして後篇では米・豪・仏の競馬と馬産の関係から、地方競馬を救う根拠と意義について説明していく。

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