高知優駿はカチマサル

 第29回高知優駿(黒潮ダービー)は黒潮皐月賞7着から見事に雪辱を果たしたカチマサル(工藤英嗣厩舎)が5馬身差を付ける圧勝を見せ、自身の初重賞、そして工藤厩舎に初のダービー制覇をもたらした。赤岡修次騎手はイージースマイル(平成9年)に次いで2度目。高知競馬デビュー馬限定という条件なしで行われた初の黒潮ダービーで、北海道デビュー馬初の優勝馬という事になった。2着には同じく北海道デビューのヒガシダンサー。以下3着に単勝1番人気の黒潮皐月賞馬マルチラブリー、4着クロシオタイガー、5着リードチヤンピオンという結果である。
 
 勝ち馬は北海道競馬で3戦未勝利。いずれも門別の1200m戦だったが現在の脚質を考えれば敗因にも納得できる。今年に入って高知競馬場で初勝利。3連勝として1番人気で迎えた黒潮皐月賞TR若葉特別を大敗。不良馬場と1番枠で思うようなレースができなかったようだが、本番黒潮皐月賞も不良馬場となりマルチラブリーの7着と敗れていた。黒潮ダービーの2戦前に古馬と初対戦。D級条件の2着となったが、このときに直線で12秒0前後の強烈な末脚を披露してうならせると、TR青葉特別でも直線入り口で4馬身ほどあった先頭の差をものともせず豪快な差し切り勝ちを収めていた。今回はTRと同じくフレンチアスカが作る絶妙なスローペースを早め好位で追走。勝負所でもさほど置かれず4角先頭から後続を突き放す完璧なレース運びで圧勝劇を演じて見せた。落ち着いたペースを外目からじっくり追走できたことが大きな勝因とみるが、まともに走ればスケールで他を圧倒できる素材の証明であり、今後もこの世代の高知競馬を代表する活躍をみせるであろう。このタイプは古馬相手の一般戦や遠征競馬でも負けることによって強くなれる可能性を秘めており、先々の成長が楽しみとなる。

 さて2着以下の各馬であるが、ヒガシダンサーは単勝4番人気に推されるだけあって見事な走りを披露した。「勝ちに行く」競馬を見せた鞍上・緒方洋介騎手はやはり非凡であり、さほど馬力を必要としない重馬場を味方に直線までしっかり伸びた本馬も立派だ。シアトルダンサー2の産駒で胴の造りがゆったりしているだけに1900mの重馬場は少なくともマイナス材料にはならなかったはず。

 マルチラブリーは連勝式ではともかく、単勝で1番人気。馬ッぷりは牝馬とは思えないものがあって期待されたが、距離・馬場というよりも展開に泣かされた感がある。内枠でフレンチアスカに先に行かれたため常に他馬のペースを気にしながらの追走となり、この馬の持つスピード性能が生かしきれなかった。それでも3着に踏ん張るあたりが黒潮皐月賞馬の底力だろう。本質的にはもう少しペースが早いレースの方が向いていそうだが・・・。

 4着クロシオタイガー・5着リードチヤンピオン・6着ラランチャ・7着フレンチアスカといったメンバーは現時点での力量を充分に発揮したと言えそうだ。それぞれ夏場からこの秋の成長を待とう。

 勝ち時計2分7秒9は高知優駿が1900mになってからは最も遅い決着だった。前半のスローペースが要因のひとつではあろうがこれまでの勝ち馬イージースマイル・カイヨウジパング・マルチドラゴン・オオギリセイコーを果たして越えていけるのか。勝ち馬のカチマサル始めこの3歳世代に与えられた課題は多い。
 
 *訂正 上記本文中に「工藤英嗣厩舎に初のダービーを…」とありますが、1984年の第12回黒潮ダービーをニシケンカチドキで制しており、今回が2度目という事になります。お詫びして訂正いたします。

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