第16回全日本新人王争覇戦の熱戦が終了。
ふるさとの高知県大月町が水害被害にあったばかりの高野剛司騎手が、交歓会で見せた表情が忘れられない。騎乗馬は大井の柏木健宏騎手を予定していたカツクローバー。こっそりと「行く(逃げる)気だろ?」と聞いた筆者に「うん」とうなずいた後、口に指を当てて「シーッ!」というポーズ。レースでは12頭で一番のスタートダッシュを見せて直線半ばまで粘るレース振り。詳しくはこのサイトのビデオ映像でご確認いただきたいのだが、しかしケレン味のないレースというのがこの新人王戦の楽しみであって、今年も観戦後に(筆者は実況後というべきか)爽やかな気持ちが胸いっぱいに拡がっていた。
さあ第9回開催の後半2日間である。
15日(土)は恐らく不良馬場。アラ系の2鞍にサラ系はA級を含む9鞍。メインはサラ系A級の長浜特別だ。
1~2Rはアラ系の2歳戦。2Rでは2戦2勝のミスターブラウンがテイケイミチカヒメ・マルチタイガーの挑戦を受ける。
心配されたゲート難が解消されれば差が無いところと見られていたマルチタイガーがここで勝つようなら一歩抜け出す印象もあるが、不良馬場の800m戦ならスタートひとつだけに不確定要素もあるだろう。
4Rのエイシンプサンがなかなか面白い。馬格はないがスイスイと3連勝。ソウルオブザマター産駒は短距離のダートが恐らくベストであり、レースセンスの良さを見せている当馬であればかなり長い間安定した成績を残す事も可能だろう。
8Rのエンデュアーもモノの違いを見せている1頭。スピード性能もかなりだが、まだレース経験の浅いときにオオギリセイコーに挑んだ黒潮菊花賞(4着)以外は連対を外しておらず、その時に見せた可能性から考えればA級までの出世があってもおかしくはないだろう。
9Rのつばめ特別はサラ系D級の1400m戦。不良馬場で9番枠というマルチラブリーが登場する以上、相当なスピード決着は間違いないだろう。2歳にリンデンスワローという新馬勝ちの逸材が現れたスキャン産駒だが、同じミスタープロスペクター系でもスキャンの場合、母がカーリアンの全妹だけあってダートオンリーという印象にはならないのだが、やはりマルチラブリーも瞬発力が削がれるパンパンの良よりもこういう馬場向き。ただし特別戦だけにデビットカード・トウアナイス・ゴールデンシェイク・ウエストワカといった骨のある相手との対戦となる。黒潮菊花賞(10月21日)の勝ち負けを意識するならここでは負けられないところだが・・・。
メインの長浜特別はジョイフライト・ライジングハントの前走1~2着組に加えて建依別賞のエイシングランツにマッケンリーダー、さらにはオオギリセイコー・イブキブラックマンと多士済々だが、注目してみたいのはオースミレパード。連勝中のマイネルキャラバンを負かした前走はもちろんだが、高知競馬でもJRAのオープン特別を勝っている馬とは数えるほどしかいない。マルカイッキュウ・メイショウタイカンがその2頭だが、あるいはそれに相当するJRAの実績馬といってもナムラコクオー・スーパープレイくらいしか最近では挙がらないわけで、JRAオパール特別勝ちのオースミレパードは中央からの移籍馬の中でも抜群の実績と言っていいだろう。ここは胸を借りる立場で臨める分だけ力量をしっかり見極めたい。
16日(日)は予報では曇り時々晴れといった感じだ。あるいは若干の馬場の回復も見込まれる。
2Rにサラ系の2歳戦。初戦を勝ったリンデンスワローはレース既経験馬相手に堂々の白星。ちょっとモノが違う感を見せた。
同じスキャン産駒のマルチラブリーも早くからスッキリとした馬体に見せていたが、この馬も494キロにしては薄手に見せる。
母父のリンデントリーはクレペロの子孫でブレニム系の種牡馬。マチカネワラウカドも母系は異系(セントクレスピン・フェアトライアル・ドナテロなど)が多く配合されていて、そういった意味では初戦の800m戦を難無くこなしたのは今後に向けて明るい材料だろう。2連勝を目指すレースとなる。
メインの高知新聞杯。出走馬はリードチヤンピオン・クロシオタイガー・カイヨウマックス・タイアップレディ・ハッピードリーム・マルゼンスイート・リキテイオー・スーパーマドカの8頭となった。クロシオタイガーが同斤量なら中心視されても当然だろう。後は1800mの距離での相手探しとなるか。前走できっかけを掴めそうなリードチヤンピオンを始めこの条件で新味を出せる馬を探したい。
最終の野分特別はサラ系B級の1800m戦。10頭が先行馬から極端な追い込みタイプまで揃って予想が楽しい1戦。
1800mは意外と先行馬向きのペースになりやすいが、底力ならツキフクオーや、追い込み一手のシーアタックも展開次第で浮上しよう。展開予想は必須だ。
晩夏から初秋へと変わる季節。本格的な秋競馬はもうまもなくスタートだ。2日間の熱戦にご期待を。