第8回黒船賞回顧~G1馬の底力!

 前後数日間のうち、たった一日だけ雲ひとつ無い快晴に恵まれた3月21日、この日に高知競馬春祭りとして第8回黒船賞(G3)、第19回全日本新人王争覇戦競走などの注目レースが行われた。前日は稍重でかなり時計の速い状態だったが、当日は晴天のために後半のレースでは良に回復。逆に時計が掛かる馬場になっていた。

 残念ながらJRAの石橋脩騎手が参加出来なくなってしまったが、全日本新人王の出場騎手はやはり全員が元気一杯。これを見るのが何よりの楽しみと語る地元のファンもいる。前夜のレセプションパーティーで慣れぬスーツ姿と壇上で抱負を述べる“コメント”に悪戦苦闘しながらも、闘志と希望に胸を膨らませるその存在が初々しく、清々しい。
 本番前の騎乗でも彼らは先輩騎手達に胸を借りて積極的なレースを見せる。
1Rで4番人気ノーザンウェーに騎乗し2着となった笠松・山田順一騎手。2Rでも荒尾・松島慧騎手が3番人気ガロで2着に食い込む。4Rで8番人気キャンドルサービスに騎乗した岩永千明騎手の果敢なレースぶりにも唸らされた。結果こそ9着だが、ピタっと決まった騎乗姿勢と強気に2番手まで押し上げた積極性。なるほどここまでの通算連対率が25%と参加騎手中トップだけのことはある。新人王争覇戦でもいわゆる“追わせる馬”パレスシャトーの騎乗で魅せていた。
 
 競馬はいつも新鮮な驚きを与えてくれるものでないといけないと思う。新人王争覇戦にはこの驚きと、新人騎手達の未来を我々に感じさせてくれる素晴らしいレースだ。
 
 そして本番の新人王争覇戦。岩手・木村暁コウヨウヒーローが好スタートから先頭に立つも、JRA・長谷川浩大ナチュラルタレントが単騎の逃げを許さない。2頭が併走して後続に5馬身ほどのリードを取る。離れた3番手集団に荒尾・松島慧セトノマッハと、早め上昇の兵庫・大山真吾オーサカヅキ(1番人気)、更に大外に北海道・伊藤千尋ヘッシュが付けていた。更に開いて福山・松井伸也マイゴールドが続くと、中団の内が高知・永森大智イーストポイント。外に笠松・山田順一リトルダンサー。更に後方から荒尾・岩永千明パレスシャトー、大井・有年淳カイヨウグランプリ、川崎・山崎誠士ヒクテアマタが続くという展開になった。
 前半の厳しい流れのためか先行2騎はさすがに勝負所で一杯に。3番手集団から伸びてくる各馬のうち外に回したオーサカヅキは結果的に直線伸びず、逆に内をすくった2頭、セトノマッハとヘッシュが抜けていく。中団から差を詰めたリトルダンサーがこの2頭に迫る。後方からはパレスシャトーとヒクテアマタだが、4コーナー最内を通ったヘッシュがリードを取る。2番手にリトルダンサーが上がるも、ヘッシュが先頭を守ってゴールイン!第19代新人王の栄冠は北海道・伊藤千尋騎手に輝く事になった。北海道勢は第1回から3年連続優勝と、第6回に渋谷裕喜騎手が制しているからこれで5度目の勝利となり、地区別では圧倒的な成績だ。(2位は兵庫の3勝)

 さあ今度は四国唯一のダートグレードレース、G3の黒船賞である。

 昨年の不良馬場と打って変わってパンパンの良馬場。芝と違って時計が掛かる事を意味している。スピードとパワー、そして何より精神力の強さが問われる条件で、どの馬が自らの力を発揮して見せるのか。

 スタートで1番人気のシーキングザダイヤが後手を踏む。ゲート内でうるさかったが、スターターが落ち着くのを待ってゲートを開いたものの、ここで丁度トモを落とした格好になったようだ。
 内から好発を決めたのが昨年の覇者ディバインシルバー。前年のようにスイスイと逃げ切ることが出来るか。しかし今年は果敢に競りかけてくる川崎のロッキーアピールがそれを許さない。半馬身くらいの差でプレッシャーをかけながら2番手マークの位置を取る。3番手に名古屋のヨシノイチバンボシ、そして4番手が2番人気のマイネルセレクトだ。5番手集団は3頭で、内にストロングボス、間ツルマルザムライで、外に今日は早めのノボトゥルー。鞍上にいる西川敏弘騎手は急遽代打での騎乗ながら地元のリーデイングジョッキーらしい直感でこの位置を選んだという。シーキングザダイヤはその後方で、以下ハッピーサファイア、マルタカサザン、ハイフレンドピュア、イブキライズアップの順で向こう正面へ入って行く。
 
 3コーナー、先行勢から脱落したのはなんとディバインシルバー。馬場・展開ともに昨年とは全く違うものにはなったが、やや脆い面を見せてしまったか。
ここでロッキーアピールとヨシノイチバンボシが並ぶと、じわりと接近するのがマイネルセレクト。JBCスプリント以来の休み明けに59キロの重斤量という条件下。さすがに一気に弾ける感じはないが、着実に先頭との距離を縮めていく。これがG1馬の精神面を含めた底力というものだろうか。直線に向いて外から抜け出し後続に2馬身差を付ける完勝。そして直線大外から2着争いに加わったのが、こちらもG1馬のノボトゥルー。デムーロ騎手のアクシデントはいかにもピンチだったが、地元のリーディングジョッキーに乗り鞍が無かったのが吉と出る。西川敏弘騎手が5番人気の馬で見事2着に追い込んだのだ。

 重賞5勝目となる勝利を飾ったマイネルセレクト。勝ち時計、着差、内容ともに圧倒的なものではなかったが、今回この条件でも“勝ってみせた“のはG1馬の貫禄。実際に武豊騎手の表彰式でのコメントは「思ったよりも手応えが悪くて厳しいレースになりましたが、馬が良く頑張ってくれました」というもの。ただし高知競馬場を良く知る名手が勝てる位置にマイネルセレクトを導いたのも事実。武豊騎手のファインプレーは見逃せない。中村均調教師にも表彰式直後にお話を伺えたが、「まだ完調手前。向こう正面での手応えを見たときには心配しました。ただ一度使うとガラっと変わる馬なので、次走に予定しているかしわ記念では本来の姿を見せてくれるでしょう。その後は名古屋でJBCスプリントの連覇を目指します。そして来年こそは絶好調でドバイに行きたいですね」とコメントしてくれた。

 ノボトゥルーはこれでなんと3年連続の黒船賞2着。今回やや人気を落としていたが、地方競馬場の1400m戦は非常に安定した成績を残している上、改めて地方競馬のトップジョッキーの腕の確かさを証明した格好。
 3着のロッキーアピールは新人王にも出場した山崎誠士騎手のケレン味のない騎乗で一杯に粘った。マイネルセレクトと同じくこちらも休み明けだが、小回りコースで自らの武器を存分に発揮したレースとなった。
 4着ヨシノイチバンボシは絶好位3番手からの競馬だったが、マイネルセレクトに外からこられた分伸び切れなかったか。しかしまだ4歳だけに今後もこの路線の活躍が楽しみだ。
 5着には地元高知のハイフレンドピュア。なんと今回のメンバーで上がり最速(38秒4)を記録した。ちなみに上がりの順位は以下の通り。

1 ハイフレンドピュア
38秒4  3角 11番手
1 イブキライズアップ
38秒4  3角 12番手
3 ノボトゥルー
38秒8  3角  4番手
4 マイネルセレクト
38秒9  3角  3番手
5 ハッピーサファイア
39秒0  3角 10番手

 レースの前半2ハロンは筆者の手元で23秒6だから不良馬場の昨年(23秒3)とコンマ3秒しか違わなかった。勝ち時計は今年が1分28秒4で、昨年(ディバインシルバー)が1分26秒4と丁度2秒も違うから、今年は馬場を考えると相当なハイペースの消耗戦になったという分析が出来る。ディバインシルバーの失速はここにも原因が求められよう。レースとしてはノボジャックが最初に優勝した第4回(2着ナショナルスパイ、3着レジェンドハンター)の時の様相に似ている。
 あとシーキングザダイヤの敗因は、ゲートで落ち着かなかったように精神面にあったかもしれない。前走がフェブラリーSの2着。激走の後でもあるし、今回はまったく競馬にならなかった印象。馬場ももう少し時計の速い状態が向くかもしれない。馬場についてはディバインシルバーあるいはマイネルセレクトにとっても、もう一雨あった方が戦いやすかったかもしれないが…。

 第8回の黒船賞ウイナーはマイネルセレクト。ダートグレード短距離戦線の春の始動レースとして、今年は初めて前年のJBCスプリント勝ち馬が制した。
結果的にG1馬のワンツーフィニッシュだから、競走馬がスピードやパワー以外に持ちうる武器、すなわち精神力の偉大さを見た思いがするのである。

 最後に当日の売上げを。黒船賞や全日本新人王を含めた一日の売得金額は目標金額を上回る3億1千7百万円を計上した。素晴らしい馬と騎手、そして素晴らしい競馬ファンに恵まれて今年の高知競馬春祭りは成功の内に幕を閉じた。
来年もぜひ黒船賞を。それが高知競馬新年度の大目標になろう。

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