黒船賞特集２は地方他地区からの出走馬を紹介する。
まずは過去５回の地方他地区からの出走馬成績をまとめてみよう。
第１回
６着 トミケンライデン（笠松）
57安藤光彰 勝馬から0.8秒差
７着 アメージングレイス（笠松）
55安藤勝巳 0.9秒差
８着 ライフアサヒ（名古屋）
55吉田 稔 1.2秒差
（１着）リバーセキトバ（高知）
55北野真弘 1分29秒1（稍重）
第２回
９着 アイディアルクイン（大井）
54藤村和生 2.5秒差
除外 ランフォータックス（笠松）
55安藤勝巳 ——-
（１着）テセウスフリーゼ（ＪＲＡ）
56的場 均 1分26秒0（不良）
第３回
４着 シゲノキューティー（佐賀）
54真島正徳 1.0秒差
７着 ゴールデンチェリー（名古屋）
53吉田 稔 1.1秒差
（１着）ビーマイナカヤマ（ＪＲＡ）
56鹿戸雄一 1分27秒9（良）
第４回
２着 ナショナルスパイ（大井）
55的場文男 0.2秒差
３着 レジェンドハンター（笠松）
56安藤勝巳 0.4秒差
５着 ハカタビッグワン（笠松）
56安藤光彰 1.1秒差
７着 キングラシアン（佐賀）
56北村欣也 2.4秒差
（１着）ノボジャック（ＪＲＡ）
56武 豊 1分28秒1（稍重）
第５回
４着 スピーディドゥ（大井）
55見澤譲治 2.8秒差
５着 ゼンノモトーレ（大井）
55森下 博 2.8秒差
11着 エイシンオニオンタ（笠松）
56川原正一 4.2秒差
（１着）サウスヴィグラス（ＪＲＡ）
56柴田善臣 1分26秒8（重）
過去５年で笠松６頭、大井４頭、名古屋２頭、佐賀２頭が参戦して0-1-1-12（除外馬も含めた）という成績だが、やはり好走条件はダートグレードでの入着経験ということになろう。唯一連対を果たしたナショナルスパイはこの２ヶ月前に川崎記念Ｇ１で４着しており、これまた唯一３着となったレジェンドハンターは芝ではあるが京都競馬場のＧ２デイリー杯３歳Ｓを勝ち、Ｇ１朝日杯３歳Ｓでも僅差の２着に粘っているように実績面で抜きん出ていた。
そういった意味ではＧ３勝ちがあり、更にＧ３では掲示板を外していないというロードバクシン（兵庫）の今回の回避は残念だが、それでもこれまでにないタイプの遠征馬が３頭出走を予定。鞍上との組み合わせにも魅力たっぷりという地方他地区出走馬が揃っている。北から順に紹介していこう。
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☆ゲイリーコンドル 牡８歳 栗毛
岩手・佐藤雅彦厩舎
連対時の馬体重 510～534kg
父Ａｆｌｅｅｔ
母 Ｂｒｅｅｚｅ Ｌａｓｓ
母の父 Ｉｔ’ｓ Ｆｒｅｅｚｉｎｇ
３歳時…現在の表記で３歳７月に中央競馬でデビュー。1200ｍのダート戦を２連勝して３戦目はいきなりＧ３のユニコーンＳ。ここではウイングアローの４着に敗れるも1200ｍのダートに戻ると年末にまた２連勝。
４歳時…Ｇ３ガーネットＳは５着。すばるＳを３着した後休養に入る。夏の復帰で阿蘇Ｓ２着、大阪スポーツ杯を優勝と、相変わらず1200ｍのダートでは圧倒的な力を見せる。根岸ＳＧ３を３着、ガーネットＳＧ３で４着と重賞競走での好走も印象的なシーズンだ。
５歳時…ガーネットＳＧ３で２番人気に推されるも８着。その後休養に入る。
６歳時…１年以上の休養明けとなった９月のＢＳＮ賞を優勝。なんとここまで全て1200ｍのダート戦を６勝とした。秋のシリウスＳＧ３、武蔵野ＳＧ３は共に大敗。
７歳時…読売マイラーズカップＧ２と栗東Ｓに出走も共に大敗。岩手の佐藤雅彦厩舎へ転厩して１２月に復帰。水沢の緒戦となったＡ１（1800ｍ）を制する。
８歳 …１月１１日の水沢Ａ１でチュードサンデー、バンチャンプらを抑えて２連勝。黒船賞が今年２戦目となる。
地方競馬の雄、岩手から初の黒船賞参戦となるゲイリーコンドル。
脚質は圧倒的に先行タイプであり、５００キロ超の馬体を考えても米国産らしいパワーのあるスピードタイプだ。血統表を見ると特に目立つのが母系の中にあるナスルーラ系とコートマーシャルの血。爆発的スピードを伝えたレディジョセフィンが集中的に伝えられており、父方のアフリートからは典型的米血よりもナスルーラ的スピードが引き出されているようだ。これが当馬にとって最大の武器であり、1200ｍのダート戦を主戦場にしてきた血統的背景ともなろう。
一方で中央時代は1200ｍを越える距離と重賞でもうひとつ我慢しきれなかった部分を短所とも取る事が出来る。
岩手移籍後は恐らくスピードの違いで1800ｍ戦を克服しているようだが、環境や気性面の変化でどこまで新味が加わっているのか？小回りでスピードを活かす競馬が身に着いているのなら黒船賞でもあっと言わせるシーンが期待できる。鉄砲駆けはできるタイプなので約２ヶ月の間隔は大丈夫だろう。
騎乗を予定している村上忍騎手は、１９９５年の全日本新人王争覇戦を優勝して高知でもおなじみの若手。最近はオーストラリアへも武者修行に出かけて腕と名前を同時に上げてきた。久々の高知競馬で”凱旋”騎乗だ。
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☆セトノマックイーン 牡７歳 芦毛
名古屋・角田輝也厩舎
連対時の馬体重 462～500kg
父マジロマックイーン
母セトロマン
母の父ノーザンディクテイター
３歳時…現在の表記で３歳５月にＪＲＡでデビュー。初勝利は４戦目で1200ｍのダート戦（阪神）だった。
４歳時…なかなか２勝目が挙げられない。この年は１１・１２月の京都・阪神開催で３走連続２着と惜敗続きで終えている。
５歳時…５月の福島開催まで６戦するも結果が出ず、名古屋競馬場での交流戦に参戦して見事快勝。秋にも笠松の交流戦で勝利を挙げて３勝目。
６歳時…３月の阪神ダート戦まで４戦するも、ここで名古屋競馬場へ移籍。重賞・マイル争覇で５着など善戦して徐々に調子を上げると、夏場のオープン特別を連勝。秋シーズンには船橋の日本テレビ盃Ｇ２やとちぎマロニエカップＧ３などにも遠征して重賞ばかりを５戦。
７歳 …年明けからガーネットオープン・アメジストオープン・紅梅特別と３連勝。２月２７日のマイル争覇では４着ながら、勝ち馬キウィダンスとはコンマ３秒差という結果を残している。黒船賞は今年４戦目、ここ３戦と同じコンビとなる安部幸夫騎手はこれまた全日本新人王争覇戦競走を１９８９年に制しており高知では御馴染みだ。
強みは何と言っても地方小回り1400ｍ戦での実績だろう。昨年はかなり強敵を相手に競馬を経験しており、今年に入っての快進撃がメジロマックイーン産駒らしい成長力に裏づけされたものならば上積みも見込めそう。いとこにゴーイングスズカがいて高齢まで活躍しているのが頼もしい。祖母のダンシングファイタは中山牝馬Ｓの勝ち馬で、そのおばは阪神３歳Ｓ勝ちのキシュウローレルと、ファンにも懐かしい名前が並ぶ。父の代々続く内国産で、ミスタープロスペクター系やフレンチデピュティ、ブロードブラッシュなどの産駒が居並ぶ黒船賞にあって、こういう血統の馬が活躍すると楽しいものだ。
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☆タッチダウンパス 牡６歳 鹿毛
兵庫・西村守幸厩舎
連対時馬体重 488～516kg
父ワッスルタッチ
母スズカベル
母の父 アーティアス
２歳時…現在の表記で２歳の９月に新潟県競馬でデビュー。デビュー戦の認定競走と２戦目の平場を連勝。新潟ジュニアカップでは６着だった。
３歳時…旧４歳戦で５勝をマーク。この年は重賞などへの出走はなし。
４歳時…一般戦のＢ級で徐々に力量を現し始め、年末の準重賞・アルツ磐梯賞でレコード決着のコンマ２秒差３着となりオープンクラスの力を証明。いよいよ年明けの重賞・新潟グランプリで新潟王者奪取を狙う。
５歳時…と思ったら新潟グランプリは降雪で競走取りやめ。新潟県競馬の廃止に伴い兵庫へ移籍。Ｃ級から始まった兵庫での競走成績は立派なもので、連対を外すことなく１０戦７勝でオープンへ出世し、ついにグレード競走に出走。その兵庫ゴールドトロフィーＧ３では好位からのレースでノボトゥルーの５着に粘っている。
６歳 …中距離重賞の六甲盃を４着、1400ｍのウインターカップでマッキーローレル以下を完封。名古屋に遠征したマイル争覇では勝ち馬キウィダンスにタイム差なしの３着。今年４戦目が黒船賞となる。
ダート1400ｍ戦では通算１０戦８勝２着１回のパーフェクトな成績。一度だけ連対を外したのが兵庫ゴールドトロフィーＧ３で、それも５着なら及第点を与えられる実績だろう。直前のマイル争覇ではセトノマックイーンに先着しており、交流ブロックを形成する東海・北陸・近畿ブロックを代表する短距離馬の１頭として恥じない力量を持っている。湿ったダートを得意としそうな血統構成だが、実はこの馬はまだ不良馬場で走った事がない。本番で不良馬場だとまた違った一面が見られるかもしれない。
鞍上を予定する岩田康誠騎手は２０代にして２０００勝を越えてしまった凄腕。ブランブランの長手綱に、腹帯も緩めにしての騎乗スタイルなら確かに馬には負担が掛からない。出来るものならそうして乗りたい騎手は多いだろうがどっこい並みの腕では馬を御せず、鞍ズレを起こしてしまう。つまり岩田康誠はこういう騎乗スタイルにおいて恐ろしいほどのオンリーワンである。高知競馬には初登場だが、今回の地方他地区代表馬の騎手は新人王優勝騎手２名と、そして初見参の、つまり新人王戦には出ていないもののすごい数字と実績を残している若手が騎乗ぶりを披露することになる。これだけでも一見の価値があるというものだ。
黒船賞特集、次回はＪＲＡ出走予定馬を紹介しよう。
