益田競馬に寄せる想い

 7月6・7日、島根県の益田競馬場へ出かけてきました。
JR土讃線・予讃線・瀬戸大橋線・宇野線・山陽新幹線・山口線とまあ沢山の路線のレールの上をゴトンゴトン(もしくはプァーって感じかな)と進むわけですから旅情は抜群。山口線の途中にある津和野の風情、益田駅近辺の朝市、益田市の持石海岸沿いから見る日本海の夕陽など、旅行記だけでも書ききれないほどの景色を堪能してきましたが、残念ながら今回はそれほどノンキな内容だけにはなりそうにもありません。

 正直言って、競馬場がなければ筆者が”益田市にでかける機会”はなかっただろうと思います。人口5万人、集客能力の高い”目玉となる”観光地も持たない彼の地にとって、筆者と同じように競馬場がなければ縁がなかった人という方も多いことでしょう。しかしJRAも含めた日本の競馬全体の落ち込みはこの益田市の競馬場にも容赦なく影を落とし、一両日中にも”存廃”についての答申が下されようとしています。出会う人々に聞いても、「益田から競馬場が無くなったら何もなくなるよ」、「折角、競馬場の側に石見空港が出来たのにねえ」と不安がる声が聞かれました。

 初めて訪れた益田競馬場。台風5号が通過した後の吹き返しが強いものの、上空には青空がのぞいて競馬日和となりました。今回、一緒にと声を掛けさせていただいたところ「行きましょう!」と快諾してくださった福山競馬場・佐賀競馬場の実況で御馴染み中島啓さんと2人で実況席へ。益田競馬場の実況放送は女性職員の宮内さんと佐々木さんが担当されていて、またこれが味があって素敵なんです。実況歴が長いのは宮内さんで、透明感と艶のある声が印象に残ります。落ち着いた実況はファンの厚い信頼も集めています。佐々木さんは2歳戦の実況で「先頭に立ったパッションワン、ニホンカイユーノスの子供です!」と側で聞いていたユーノス好き(筆者)を喜ばせてくれました。当然、益田競馬のファンの気持ちを代弁するようなセリフだと言えますよね。
 宮内さんと佐々木さんは他にも色々な業務を兼任しています。よく知られている事ですが、益田競馬場は少ない開催スタッフで懸命の経営努力をしてきました。業務エリアで観戦させていただいて、その仕事中の姿には職員全員の誇り高い心意気を感じました。ここは我々の競馬場であるという、強い意識がこの現場を支えているのでしょう。

 競馬場全体の雰囲気もとても素晴らしいですね。大きな競馬場にありがちなせきたてられるような感じがなくて、皆マイペースでじっくりと競馬を楽しむことが出来ます。日常の疲れを癒してくれるカタルシスというものは、この雰囲気でこそ作用するものでしょう。なかなかの高配当が出たあと、「200円だけ持ってたよ」とニコニコのファンの周りに笑顔が集っていました。土日中心の開催を行っている益田競馬場の最大の魅力はこれでしょう。

 レースの方はというと、実に接戦の多い白熱したものでした。連勝式は枠番連単のみの発売でオッズも平均的に高めです。ここで今回収得した最高の攻略法を公開しましょう。ジャーン、「益田競馬場の1350m戦は内枠を狙え」です。実はこの距離、スタートしてから位置取りに行くまでが少しトリッキーになっていてこういう結果になるようなんですが、下記にデータを記します。
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7月6・7日
益田競馬場の1350m戦11R中、10倍以上の配当が出たレースが合計5R

6日 5R 5-2 1770円
7日 5R 2-3 9260円
   6R 1-2 1600円
   8R 6-2 1020円
   7R 2-5 2890円
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 で、連対している5・6枠が3頭いるんですがこの内2頭は人気の馬。更に2枠が5R全てに連対しているのがすごいでしょ。念のため多方面の関係者に確認してみたところ「うん、枠の抽選で内を引いたらよっしゃって思うよね」などの答えが多く、どうやらこの戦法、使・え・そ・うです。

 そんなレースの中でもひときわ目を引くのは沖野耕二騎手。地元の競馬新聞によると今年度の連対率は48.57%(!)。この2日間で5勝を挙げて、通算勝利が1982となりました。そうなんです、2000勝までのマジックが18となっているのです。これはこの夏に達成確実な数字です、その日を楽しみに待ちましょう。
 その沖野耕二騎手始め関係者の方々にに面倒(?)を見てもらっているのが、我らが高知競馬から武者修行に出ている宮川浩一騎手&堅田雅仁騎手。技術面・生活面とあらゆる分野でスポンジが水を吸うように成長をしている事でしょう。実際にこの2日間も筆者の目の前で宮川浩一騎手2勝2着2回、堅田雅仁騎手2着4回と共に4度の連対を果たし、なんだか嬉しかったですね。夜は高知の2人プラス沖野耕二騎手とも話すことが出来ましたが、なんだか表情までしっかりしてきたような2人と、その2人の心に何とか届く言葉を伝えようとアドバイスを送ってくれる沖野騎手の姿が印象的でした。ちなみに蛇足ながら沖野騎手はカラオケも大変上手でした(!)。そうそう宮川浩一騎手からは「高知のファンの皆さんによろしくお伝えください」とのメッセージも預かって来ましたよ。

 沖野耕二騎手が所属している厩舎の大賀孝司調教師は、並々ならぬ情熱を持って競馬に対峙している方です。例えすぐさま高価な馬を買える状況でなくとも、それでも繰り返し北海道に出かけて馬を見る。これを続けているうちに生産者やセリの関係者からも次第に認知される存在となりました。「やっぱり根本となる馬を分かっておかないとね」と笑っていますが、周囲の視線を気にせず自らの信念を貫く事は意外と難しいものです。「日本一小さい競馬場」からニホンカイユーノスのようなチャンピオンホースが出る…。この図式はハイセイコー、オグリキャップらの得た絶大的な支持にも似て、いつかまた日本の競馬を再び活性化させるはずです。

 ニホンカイユーノスのような競走馬が、益田競馬場のような市民の競馬場から登場してきたというドラマは素晴らしいと思いませんか?社台ファームの吉田照哉代表はアメリカ二冠馬のウォーエンブレムがイリノイ州のマイナーな競馬場から現れた事を例に引いて、地方競馬の存在意義を語っています。そういえば日本競馬を代表する騎手としてその時代時代に存在した故・野平祐二さん、鉄人・佐々木竹見さん、武豊騎手らは皆地方競馬が、それも小さな競馬場が日本の競馬全体に対して果たす役割を理解し、応援してきました。そうです、トップにある人たちには見えているんだと思います。小さい競馬場は大きな競馬場を土台として支えているんです。

 益田競馬の行く末は、益田市と益田市民の世論が握っています、現在の制度上では…。我々はその議論を見守るより他ありません。しかし一度この議論を「日本の競馬全体」に置き換えた時、果たしてそれでいいのかという疑問が残ります。筆者はこの一年、日本競馬の改革に向けた動き、とりわけ農林水産省の生産局長の私的懇談会に当たる「地方競馬のあり方に係る研究会」の論議の行方に注目していたわけですが、競馬関係団体の幹部や有識者による意見交換の中で数々の問題点こそ浮き彫りになっても、改革そのものは”これから”という時間軸に置かれています。研究会の委員でもある日本経済新聞の野元賢一記者がコラムに残した「日本社会に競馬の居場所がない」。この言葉は主に制度上の事を指しているのですが、このまま(の状態)では日本競馬全体が大変なんだという危機感はじわじわと拡がりつつあるのです。

 「日本一小さい競馬場」だからこそ、残さなければならないのではないか?
どうか日本の競馬全体の構造改革が進むまで、益田競馬場にチャンスが与えられますように…。

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