混戦!黒潮菊花賞

 高知競馬も秋競馬本番を迎え、これから2週続けて重賞競走が行われる。
10月30日はサラブレッド系3歳の三冠最終戦・黒潮菊花賞。JBCを挟んで翌週の11月6日にはサラブレッド系古馬の中距離戦・珊瑚冠賞が登場だ。
いずれもアラブ系馬の出走が可能となったのだが、黒潮菊花賞に登録があったムサシボウルビーは脚部不安のため大事を取って回避、珊瑚冠賞にも現在の所はアラブ系馬出走の情報は無い。ムサシボウルビーの回避は残念であったし、またアラブ系トップホースによる珊瑚冠賞出走があれば、これもまた非常に興味深い一戦となったはずだが、これらが叶わなかった背景にはアラブ混合戦を行うにあたっての準備期間不足が指摘されよう。ローテーションの確保、あるいは条件設定といった面で、アラブ系各馬にとって出走したいという魅力的なレースにならなかったことがスペシャルレースを実現できなかった要因のひとつだ。

 さて黒潮菊花賞だが、今年はムサシボウルビーが回避してもなお大変バラエティに富んだメンバーとなっている。各馬のデビュー地は北海道から宇都宮、大井、兵庫、福山とあちこち。シルバークロスのように北海道競馬のデビューから8月まで中央競馬に移籍していた経歴の持ち主もいる。またサラ系馬として出走する「父サラブレッド、母アングロアラブ」という血統の馬が2頭居て、これらはいずれも近親にアラブの重賞勝ち馬を持つだけに、サラブレッドとの配合でどのような“出方”をするのかが注目される馬でもある。
 それから黒潮皐月賞・高知優駿という春二冠の実績組が手薄になって、新興勢力との実力比較が難しいのも特徴だ。黒潮皐月賞のトップアオバこそ無事に登場するものの、高知優駿馬・スマイルリターンは早々に回避が決まり、エレガントシエナは引退、ドリームセレナーデは兵庫へ移籍して活躍中という状況で、予想にあたっては夏の上がり馬、あるいは秋になって転入してきた各馬の実力がどの位置に来るのかを見極めなければならない。直接対戦した事が無い組み合わせが多く、更に1900mが初距離となる馬も多い。実績ならトップアオバだが、伏兵が潜んでいそうなイメージもあり、やはり混戦と言わざるを得ないところだろうか。色々な意味で興味が尽きない、そんな今年の黒潮菊花賞を各馬の紹介と言う形式で展望していこう。

 ではまず春に行われた黒潮皐月賞、高知優駿の結果を振り返る。


☆平成17年5月5日 黒潮皐月賞
サラ系3歳 1400m 馬齢

着 馬名       性斤量
騎手  調教師 体重 タイム
着差   上がり人気 
1 トップアオバ    牝 53.0
西川   國澤   488  1:33:7
    40.6   2
2 エレガントシエナ 牝 53.0
中西   炭田    423  1:34:0
11/2  42.4   8
3 ドリームセレナーデ 牝 53.0
赤岡   國澤    526   1:34:8
4   43.1   4
4 タキノメガミ    牝 53.0
鷹野   別府    435  1:34:8
クビ   41.6   12
5 スマイルリターン  牝 53.0
上田   國澤   436  1:35:1
11/2  42.3  3
6 ローゼンセンプー  牡 55.0
緒方   雑賀正 445 1:35:3
3/4  42.4   6
7 キャニオンクール  牡 55.0
中越   雑賀正 466  1:35:3
クビ   43.1   1
8 ユーリマッシー    牡 55.0
堅田   大関   464  1:35:8
21/2  42.0   10
9 グロリア       牡 55.0
宮川実  打越初  436   1:36:0
 1     42.3  9
10 ファイブスプレンダ 牝 53.0
永森   雑賀正 408  1:36:0
クビ   44.4   7
11 キャニオンプレー   牝 53.0
古川   炭田 431  1:36:2
3/4  44.2   11
12 トンチンカン     牡 55.0
倉兼   細川   472  1:37:4
  6   44.7   5

(レース展開やコメント、オンデマンド映像などはこちらを参照)

http://www.keiba.or.jp/live/jusyo/jusyokoko/20050505.html
(注・公開は終了しています)


☆平成17年6月5日 高知優駿
サラ系3歳 1900m 馬齢

着 馬名       性斤量
騎手  調教師 体重 タイム
着差   上がり人気
1 スマイルリターン 牝 53.0
上田   國澤    438   2:10:2
      41.2   4
2 トップアオバ   牝 53.0
倉兼   國澤    491   2:10:5
11/2 40.6   1
3 エレガントシエナ  牝 53.0
中西   炭田   421   2:11:5
5    42.7  5
4 キャニオンクール 牡 55.0
中越   雑賀正 470  2:11:6
クビ    42.2   2
5 ローゼンセンプー 牡 55.0
花本   雑賀正 449  2:11:9
11/2  43.0  7
6 タキノメガミ      牝 53.0
鷹野   別府   435   2:12:8
    4   42.6   7
7 レマナハート     牝 53.0
永森   別府   434  2:13:0
   1   44.3   9
8 ティティランド    牡 55.0
西山   松木   493   2:13:3
11/2  42.1 10
9 ユーリマッシー    牡 55.0
堅田   大関   464   2:13:3
 クビ   42.5   12
10 ドリームセレナーデ 牝 53.0
赤岡  國澤   528  2:13:6
 11/2  43.1   3
11 グランドパストラル 牝 53.0
西内  川野   407   2:14:0
    2   44.8   11
12 グロリア       牡 55.0
宮川  打越初  441   2:14:3
 11/2  43.3  6

(レース展開やコメント、オンデマンド映像などはこちらを参照)

http://www.keiba.or.jp/live/jusyo/jusyokoko/20050605.html
(※公開は終了しています)


 そして10月30日(日)第10競走、第9回黒潮菊花賞の枠順である。


重賞競走 第9回黒潮菊花賞
3歳OP 1900m 定量 発走16:10

枠馬 馬名       性
騎手  斤量 調教師
前走 日・クラス・着順・距離
11 イズミスミレ    牝
倉兼育康53(平和人)
10/9 D級5組 5着 1300m
22 アデランタル    牝
宮川 実53(打越初男)
10/15 E級5組 3着 1300m
33 キャニオンプレー 牝
中越豊光53(炭田健二)
10/15 E級3組 1着 1000m
44 ローゼンセンプー 牡
緒方洋介55(雑賀正光)
10/16 D級イ  5着 1300m  
55 トップアオバ    牝
西川敏弘53(国澤輝幸)
10/9 B級選抜 7着 1600m
66 タキノメガミ    牝
鷹野宏史53(別府真司)
10/15 E級4組 5着 1300m
77 キャニオンクール 牡
上田将司55(雑賀正光)
10/16 C級イ  5着 1300m
88 サンキョウヘイロー牡
赤岡修次55(田中譲二)
10/15 E級6組 1着 1300m
89 シルバークロス  牡
中西達也55(松木啓助)
10/10 D級6組 1着 1300m

 黒潮皐月賞馬で高知優駿2着のトップアオバはちょうど中枠。先行策が予想されるシルバークロスは外枠となった。ローゼンセンプーらの出方次第で好位というケースもあるのかどうか。この枠ならサンキョウヘイローも好位集団。
キャニオンクールやキャニオンプレーもこの集団か。イズミスミレ、タキノメガミやトップアオバ、アデランタルといったところが中団から後方の追走となりそうだが、スローが予想される中距離戦、あっと言わせる出し抜けを狙う馬もいるかもしれない。

 今度は出走各馬のプロフィールである。黒潮菊花賞の馬番順に並べている。
また最高タイムとしてあるのは高知競馬場での各距離の持ち時計だ。

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1番 イズミスミレ
 (サラ系)
牝 鹿毛
父チアズサイレンス
母イズミリンボー
母の父ミクニノホマレ

兵庫で2歳時にデビュー。18戦2勝で勝ち星はどちらも2歳時のもの。高知では6戦1勝で8月20日のE6を勝っている。先行集団を睨む中団からの差し切り勝ちだった。叔母に全日本アラブクイーンカップを連覇した兵庫の名牝ヒカサクイーン。父は名古屋優駿を勝ったチアズサイレンスで、中距離重賞でやれる下地はあるが…。

最高タイム
1300m 重  1:27:5(5着)
1400m 不良 1:34:3(1着)

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2番 アデランタル

牝 栗毛
父スキャン
母ウィッチクラフト
母の父トニービン

兵庫でデビューして16戦1勝。今年8月に高知転入で4戦0勝3着2回という成績。スキャン産駒で馬体もそこそこあるタイプだから行かせれば行けるし、溜めれば差す脚もある。不良は向くはず。叔母リキアイアクトレスが中央4勝。
母系の一族からアラタマインディ(小倉記念)。コスマーの系統だからノーザンダンサーやヘイローらの名前が並ぶ。

最高タイム
1300m 不良 1:26:3(3着)
1400m 不良 1:34:9(8着)

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3番 キャニオンプレー

牝 芦毛
父ブラックタイアフェアー
母ターフエリザベス
母の父アスワン

宇都宮でデビューして7戦1勝。7戦目に白星を挙げて高知へ転入。高知では14戦1勝。中団からの競馬をしていたが、近走は好位に出られるようになって脚質の幅が広がっている。前走のE3、1000m戦は2番手抜け出しで1着。ビューチフルドリーマー系の牝系で、一族からオークスのタケフブキ、ダービーのタケホープが出ている。

最高タイム
1300m 不良 1:26:7(2着)
1400m 不良 1:34:4(3着)

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4番 ローゼンセンプー
 (サラ系)
牡 栗毛
父キョウトシチー
母マルシンジーニアス
母の父ローゼンタイム

アラブの重賞ウイナー、荒尾のマルシンランサーと福山のデザートビューがいとこにあたる。この馬はキョウトシチー産駒でサラ系での出走となった。デビュー地は北海道で14戦1勝。高知転入は2歳の12月で、そこから高知で27戦2勝という成績。春シーズンは黒潮皐月賞6着、高知優駿5着だったがひと夏を越しての自力強化は明白で、10月9日のD級選抜は先行して2着(1着スカイビーンズ)と健闘した。展開一つで粘るシーンも。

最高タイム
1300m 不良 1:26:5(5着)
1400m 重  1:33:4(2着)
1900m 稍重 2:11:9(5着)

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5番 トップアオバ

牝 栗毛
父ヒシアリダー
母ナスノトップ
母の父サクラサニーオー

北海道10戦2勝、9戦目にアタックチャレンジを勝っている。2歳10月に高知転入。TR若葉特別勝ちから黒潮皐月賞を制し、人気に推された高知優駿ではやや展開も向かず2着に敗れる。古馬C2を勝つなど早くから一般戦で揉まれていたが、8月13日にC2で3着して以来休養に入る。復帰戦は前走のB級選抜で、さすがに休み明け、相手強化で7着も、叩き2走目での本番は上昇必至。非凡な決め手を発揮できる状態まで持ってこれるか。祖母の叔母にあたるのがナスノカオリ(桜花賞)、ナスノクイン(オークス)の姉妹。

最高タイム
1300m 稍重 1:26:5(1着)
1400m 不良 1:31:5(1着)
1600m 良  1:49:3(6着)
1900m 稍重 2:10:5(2着)

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6番 タキノメガミ

牝 黒鹿毛
父ラストタイクーン
母コマノマーベラス
母の父イルドブルボン

北海道デビューも10戦して3着まで。2歳12月に高知へ転入後徐々に力をつけて当地では21戦3勝。春の二冠は黒潮皐月賞4着、高知優駿6着。やや非力な印象だがレースセンスは上々。いい位置に付けられればひと脚は見せる。
F4までの勝ち鞍がある。父は国際的種牡馬ラストタイクーン。兄コマザブルが上山のさつき賞を勝っている。

最高タイム
1300m 不良 1:26:3(1着)
1400m 不良 1:33:5(3着)
1900m 稍重 2:12:8(6着)

---------------------

7番 キャニオンクール

牡 芦毛
父ブラックタイアフェアー
母マルブツティアラ
母の父ストラダビンスキー

宇都宮デビューで7戦1勝。今年4月に高知転入。移籍2戦目でスマイルリターン以下を抑えての勝利を挙げ、一躍人気となった黒潮皐月賞は7着。高知優駿も4着と重賞ではもうひとつという春シーズンだった。夏場もコンスタントに出走して9月にはD5勝ち。C級の強力古馬陣との対戦経験あり。キラリと光る潜在能力をここ一番で発揮できるか。叔父にあたるのがマルブツビンスキー(中央3歳OP特別の春蘭S勝ち)母系はシラオキ系で、曾祖母の兄はダービーのコダマ。他に神戸新聞杯のワイドバトルなど。

最高タイム
1300m 不良 1:26:0(5着)
1400m 不良 1:32:3(1着)
1900m 稍重 2:11:6(4着)

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8番 サンキョウヘイロー

牡 黒鹿毛
父キングヘイロー
母サンキョウナスカ
母の父マルゼンスキー

大井で2歳デビュー、9戦して2着までと未勝利だった。兵庫では3戦1勝で、初勝利は後方からのまくり戦法だった。高知では先行策で4戦3勝。現在E6を連勝中と勢いがある。兵庫でのことを考えれば先行タイプというよりは自在型だろう。好枠を生かしてどこまで食い下がれるか。叔父サンキョウシュートが京都新聞杯6着などの活躍。

最高タイム
1300m 不良 1:26:0(1着)
1400m 重  1:35:1(1着)

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9番 シルバークロス

牡 芦毛
父トウカイテイオー
母ベストシルバー
母の父シヤカプール

北海道7戦1勝(中央1戦含む)、デビュー戦のフレッシュチャレンジを6馬身差圧勝。2歳OPのジャングルポケット賞でモエレフェニックスの3着に入った事もある。3歳夏は中央に移籍して芝の中距離戦で先行集団からのレースを見せるも、直線は踏ん張れずという内容で3連敗。高知には10月に転入して2戦2勝。スピードで圧倒する競馬を見せており、緒戦は内枠から先行してやや苦しい展開ながらも押しきり勝ち。また前走のD6戦は重馬場ではあるが1分25秒2の時計が優秀と、将来性十分の走りを披露している。ただしフォームは独特で、父トウカイテイオーと似た跳ねるような感じはいいとしても、まだぎこちない雰囲気がある。兄はシンザン記念4着のナリタサクラオーで、叔父は愛知杯、京都金杯を勝ったホワイトアローである。

最高タイム
1300m 重  1:25:2(1着)

---------------------

 ここでタイム面の補足をしておこう。各馬の持ち時計を距離別にまとめてトップ3として並べてみるとこうなる。


 最高タイムトップ3

☆1300m
1、シルバークロス   1:25:2(重、 1着)
2、サンキョウヘイロー 1:26:0(不良、1着)
2、キャニオンクール  1:26:0(不良、5着)

☆1400m
1、トップアオバ    1:31:5(不良、1着)
2、キャニオンクール  1:32:3(不良、1着)
3、ローゼンセンプー  1:33:4(重、 2着)

☆1900m
1、トップアオバ    2:10:5(稍重、2着)
2、キャニオンクール  2:11:6(稍重、4着)
3、ローゼンセンプー  2:11:9(稍重、5着)


 まとめていこう。格付けでは前走でB級選抜を戦った黒潮皐月賞馬トップアオバが一番となる。1900mの高知優駿でもスマイルリターンにこそ及ばなかったが2着にまとめた。最内枠でやや展開向かなかった部分もあって、それほど距離で心配する部分はない。それよりもこの馬にとっては休み明けを叩いた後、どれくらい上昇度があるのかという点がポイントとなる。復調十分なら黒潮皐月賞との二冠も射程圏内だろう。
 キャニオンクールとローゼンセンプーは高知優駿の4~5着だから実績ではトップアオバに次ぐ存在だ。ポイントは新興勢力との直接対決がない点で、彼らをしのぐ成長があったのかどうかを問われる一戦となる。持ち時計から見るとキャニオンクールの能力は相当なもの。しかし脚質や安定度、更に成長度と言う点ではローゼンセンプーにも分があるだろう。
 新興勢力ということなら筆頭に挙げられるのはシルバークロス。高知では1300mしか走っていないのだが、中央では中距離ばかりを3戦。先手すんなりなら圧勝のシーンも期待される。サンキョウヘイローも脚質に幅がある点が評価される。うまく流れに乗れば上位争いの候補となる。
 突き抜けてくるほどのインパクトはなくても他の4頭も伏兵候補だ。何しろ1900m戦だけに流れひとつで結果は変わる。高知優駿でのスマイルリターンは4番人気で快勝したのだ。上記のデータをじっくり見直した上で、この興味深いレースをたっぷり楽しもうではないか。

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