全国の競馬ファンに春を告げる高知競馬ダート1400mのG3・黒船賞が3月22日にゲートインを迎える。改めて過去の勝馬を振り返れば、
第1回
高知 リバーセキトバ 北野真弘騎手
(古豪の追い込み、地元ファンの大歓声)
第2回
JRA テセウスフリーゼ 的場 均騎手
(超速のレコード決着、2着争い接戦に沸く)
第3回
JRA ビーマイナカヤマ 鹿戸雄一騎手
(後方からひとまくり、キョウエイマーチ参戦)
第4回
JRA ノボジャック 武 豊 騎手
(前半最速ラップ、逃げ切りで武騎手初制覇)
第5回
JRA サウスヴィグラス 柴田善臣騎手
(正に圧勝、今春種牡馬入りする馬が残した強さ)
第6回
JRA ノボジャック 蛯名正義騎手
(初の2勝馬、ノボトゥルーとの1・2フィニッシュ)
やはり第1回の劇的な地元勝利が強い印象を残すものの、他では第4回のノボジャックのスピードと、第5回のサウスヴィグラスの強さがインパクトを持っていただろうか。毎回何か新しい競馬の魅力を引き出してくれる、四国唯一のダートグレード競走である。
地元馬にとって黒船賞に向けて重要な一戦、だるま夕日特別が2月1日に行われた。前年は格上挑戦で2着となったナムラコクオーが黒船賞出走をほぼ手中に納める結果となったが、規定上は勝馬のみに優先出走権が与えられるとある。
昨年の実質最強馬イブキライズアップ、知事賞3勝のウォーターダグ、更には建依別賞馬のナムラコクオーが居ないメンバーは寂しいが、今回はオープン初挑戦のベストライナー、下級条件からストロングボスとタフィラルトの参戦があってオープン常連組との初対決に注目が集まった。
そしてその対決は新興勢力3頭が上位を占めるという結果となった。
2月1日(日)高知競馬第10競走
だるま夕日特別 サラ系4歳以上 1400m
着 番 馬名 性齢 斤量 騎手 厩舎 体重 タイム 差 人気
1 7 ベストライナー 牡10 55.0 中越豊 松下博 464 1:33:1 1
2 5 ストロングボス 牡 6 54.0 宮川実 打越初 540 1:33:2 1/2 4
3 8 タフィラルト 牡 4 54.0 中西達 打越初 537 1:33:4 1 8
4 4 マッケンリーダー 牡11 56.0 明神繁 雑賀秀 498 1:33:5 クビ 3
5 2 カルストンストーム 牡 8 56.0 倉兼育 大関吉 527 1:33:6 クビ 2
一番人気のベストライナーは中越豊光騎手が「予想通りの展開、ドンピシャです。最後も交わせるという自信がありました」と語るとおり、ストロングボスが先行するマッケンリーダーを交わしに掛かるのを待っての追い出し。ゴーサインが出るまでの馬の落ち着きと、仕掛けてからの機動力が大きな武器で、高知競馬場のレースの流れにとても合っているタイプの馬だ。上山時代にも実績がある馬だが、移籍後に環境や馬場、レースの流れの変化に戸惑って力を発揮できない馬も存在するから、やはり高知の水が合ったのだろう。これで移籍後負けなしの11連勝。破った相手の中にはナムラコクオーもおり、黒船賞には高知を代表する馬として臨む。パンパンの良馬場とは言え、さすがにタイムは物足りないが、本番の黒船賞では勝負鉄に履き替える予定で(高知競馬ではJRA交流レースでのみ認められている)2秒以上は縮めてくるだろう。
ストロングボスは大井競馬でのデビュー戦を勝った後、長い長い1年9ヶ月の休養を経てようやくレースに戻ってきた馬だ。3歳8月のそのデビュー戦は2着に8馬身差を付けているから、相当な素質を秘めていた事が分かる。前脚の球節は未だに問題を抱えているそうだが、それでも高知移籍後は連勝を重ねてだるま夕日特別の前走までで通算15戦14勝。シャコーグロリアに徹底的にマークされて差し切られた1敗だけで、ついにオープンクラスへの挑戦を果たしたのである。
マッケンリーダーがペースを握る隊列の2番手。540キロもの馬体がマッケンリーダーにプレッシャーを掛け続ける。当然この番手だからマッケンリーダーに楽をさせるわけにも行かない。このオープンクラスの常連を捉えに行った時の凄みはなかなかのものだった。最後はベストライナーに交わされているが、馬体が合う形ならまだ分からなかったと思わせるほどの闘志も見せた。ペースがもう少し速くなる黒船賞でこそ見てみたい。
打越初男調教師は馬体重そのものは現状でいいが、あちこちに筋肉を付けたいと語っている。脚部不安や体の硬さが邪魔をしてなかなか理想通りにはいかないものの、筋肉の鎧をまとってくるような仕上げが可能になれば、相当の器なのだろう。
3着に追い込んで目を惹いたタフィラルトはまだ4歳。中央競馬では14戦して1勝。昨年の夏に阪神競馬場の1200mダート戦を4番手から差し切っている。母のダンスドゥソワは中央3勝で、中でも京都の1400m芝戦を上がり34秒台で逃げ切った鷹ヶ峰特別が高い性能を垣間見せたレースだ。父が金鯱賞のゼネラリストだからいわゆる「ノースヒルズ血統」という事になる。
タフィラルトが高知で緒戦を迎えたのが今年の元旦。ここでは568キロの巨漢馬ユニオンヒルに敗れて2着も、2戦目にはシャコーグロリアとの一騎打ちを4馬身差で制す圧勝。シャコーグロリアを物差しにして考えればこの時点でだるま夕日特別の好走も可能性が見えていた。
ぐっとメンバーが強くなっての今回のレース、タフィラルトは決して飛び出が速くはない。しかし中団くらいから向こう正面早くも進出を開始、内々で距離を稼ぐと直線では先団に取り付こうかという勢いで伸びてくる。結局上位2頭には届かなかったものの、マッケンリーダーを交わしての3着は立派。
こちらも打越初男調教師の管理馬。「短距離の差し馬という印象だから、1400mなら面白い所もあるかと思っていた。ゲートの出がパンとすればもっと良くなるな。ストロングボスと違ってこちらの長所は筋肉の柔らかさ」とのこと。今回の馬体重が537キロで、ストロングボスと同じく現在のパワーの必要な馬場はむしろ歓迎か。
その他の出走馬、4着のマッケンリーダーに関しては前年の覇者だけにこの距離ならと期待されての3番人気。しっかり先行して存在感を見せたが、衰えをやや隠せぬ内容かもしれない。
5着のカルストンストームは高知県知事賞で伏兵人気ながら2着に追い込むと、返す刀でA級特別勝ち。徐々に蓄えてきた力を近走で見せている存在だ。
知事賞馬のカコイサンデーは早め好位の気持ちが裏目に出て勝負所で後退。
1400mは本来の守備範囲ではないが、それがはっきり出た結果と言えよう。
なお、だるま夕日特別のレースの模様はこのサイトRyomaDerby「LIVE映像」
の2月1日第10競走
http://203.139.216.150/2004020110.asx
で、見ることが出来る。(注・公開は終了しています)
さて後肢の故障で戦列を離れているイブキライズアップだが、現在ようやく軽い運動を始めたものの復帰へのメドは立っていない。花本正三騎手によると今回はじっくりと立て直す必要があり、レースへの復帰は早くても5月位になりそうだとのこと。地元最大のレース、黒船賞においてその勇姿が披露できないのは残念だが、こればかりは仕方がない。
黒船賞に向けて、今後は地方他地区・中央競馬の代表馬の情報が楽しみな時期である。地元馬の選定も含めてまだもう少し先の話にはなるが、正式な発表があるごとに出走予定馬の情報をこのコーナーでも紹介していくつもりだ。