9月10日に高知競馬場で行われる「第16回全日本新人王争覇戦競走」。出場を予定する12人の騎手について現時点でのデータをご紹介しよう。各地の競馬場のみならず、将来の競馬の世界をしょって立つ、輝ける新人ジョッキー達だ。当日までにお気に入りを見つけておくとレース観戦の楽しみも、予想の面白さもまた膨らむはずだ。
なおすべての数字は平成13年8月29日現在のデータである。
地方競馬選定騎手
岩手 陶 文峰(とうぶんほう)
80.10.16 中国・黒竜江省生まれ
31期短期 H12.4.15初騎乗
252戦22勝(本年18勝)
栃木 藤江 渉(ふじえわたる)
82.3.26 栃木県生まれ
70期長期 H11.10.9初騎乗
1272戦99勝(本年42勝)
大井 柏木 健宏(かしわぎたけひろ)
81.5.8 千葉県生まれ
72期長期 H12.10.13初騎乗
398戦15勝(本年10勝)
金沢 吉原 寛人(よしはらひろと)
83.10.26 滋賀県生まれ
73期長期 H13.4.7初騎乗
287戦48勝(本年48勝)
兵庫 西川 進也(にしかわしんや)
82.9.8 兵庫県生まれ
71期長期 H12.4.13初騎乗
335戦17勝(本年15勝)
福山 楢崎 功祐(ならざきこうすけ)
82.1.29 広島県生まれ
70期長期 H11.10.23初騎乗
1133戦64勝(本年27勝)
高知 宮川 実(みやがわみのる)
82.2.10 高知県生まれ
70期長期 H11.10.2初騎乗
918戦61勝(本年16勝)
高知 緒方 洋介(おがたようすけ)
82.10.28 高知県生まれ
72期長期 H12.10.1初騎乗
245戦26勝(本年13勝)
佐賀 井上 悦児(いのうええつじ)
76.1.17 大分県生まれ
H12.3.31免許 同年4.8初騎乗
590戦56勝(本年18勝)
荒尾 林 陽介(はやしようすけ)
82.3.15 福岡県生まれ
70期長期 H11.10.10初騎乗
693戦43勝(本年19勝)
JRA所属選定騎手
美浦 嘉藤 貴行(かとうたかゆき)
81.11.5 東京都生まれ
平成12年免許 H12.3.4初騎乗
570戦30勝(本年11勝)
栗東 小林 慎一郎(こばやししんいちろう)
81.7.8 滋賀県生まれ
平成12年免許 H12.3.4初騎乗
369戦21勝(本年7勝)
アラカルト
地区別優勝回数は北海道が4、兵庫2、あとは愛知・川崎・高知・福山・岩手・浦和・佐賀・新潟・荒尾が1回ずつ。今回参加の、栃木(藤江渉騎手)、大井(柏木健宏騎手)、金沢(吉原寛人騎手)、JRA(嘉藤貴行騎手、小林慎一郎騎手)が優勝すればその地区(あるいは団体)の初優勝という事になる。ちなみにこれまで女性騎手の優勝はなく(名古屋・宮下瞳騎手の2着が最高成績)、今回は女性騎手がいないため初優勝は次回以降に持ち越しとなった。
陶文峰騎手(岩手)は父方の祖母が残留孤児で、12歳の時に両親・妹らと来日している。水沢農業高校3年生の時には馬術で神奈川国体に出場するなど、腕を磨きながら体重管理に努力を重ね、3回目のチャレンジで見事騎手候補生試験に合格したというガッツの持ち主。話題性だけではなくその騎乗技術に注目したい。ちなみに勝負服は中華人民共和国の国旗をモチーフにデザインされている。
昨年2着となったニシケンランナに騎乗していたのが栃木の三井健一騎手。元トラック運転手だった彼がある事を契機に騎手というまったく違う職業にチャレンジしたことが話題を呼んだ。今年の最年長は佐賀の井上悦児騎手。17歳の最年少・金沢の吉原寛人騎手からは8歳年上の25歳。小倉でのJRA特別指定交流戦への騎乗なども経験し、夢の実現へ着実に進んでいると言えよう。ひとりひとりの物語の中に高知の新人王戦がまた大きな思い出を作り出す。
その最年少、吉原寛人騎手が台風の目となるか?今年4月にデビューしたばかりで早くも48勝。単純比較は出来ないが、この4月からの高知のリーディング争いは50勝台が一人だけ。いかにこの数字が抜きん出ているかわかるだろう。連対率29.6%、勝率16.7%とは、すわ第2の渡辺壮が誕生か?もちろん吉原騎手が4月からだけに限った勝利度数・勝率・連対率の三冠王である。
二世ジョッキーは数あれど、3代目ともなるとそれほどはいないものだが、大井の柏木健宏騎手はその3代目。新人騎手のチャンスが少ない大井で本年10勝のホープである。大井競馬場の小林分場育ちと言うから正に馬と共に育った、先祖代々の”馬乗り”という存在である。
JRAの小林慎一郎騎手の父は栗東の調教助手から転身して競馬ライターやキャスターを勤める事になった小林常浩氏。JRAの「優駿」誌に応募したエッセイ賞受賞作は「騎手の卵を作る法」というタイトルだった。異色の2世ジョッキーと言えそうだ。
ここまでの最多勝利は文句なく栃木の藤江渉騎手。通算99勝で本年に限っても42勝はなかなかの数字だ。次いで64勝は福山の楢崎功祐騎手。初騎乗でいきなり白星を挙げての派手なデビューを飾った高知の宮川実騎手が61勝で続く。この3人と、43勝の荒尾・林陽介騎手がまもなくデビュー3年の70期長期組。経験を生かして新人王獲りに挑む。
JRAの嘉藤貴行騎手は今年の優駿牝馬オークスをどのような思いで見つめていたのか。ケント・デザーモ騎手が鮮やかにローズバドを差し切ったレディパステルは自厩舎の馬、デビュー時には自分が手綱を取って初勝利に導いている。しかし嘉藤騎手は憧れのスーパージョッキーが華やかな舞台で勝利を勝ち取る映像を、必ずや自らのエネルギーに変えてしまうのだろう。昨年度は美浦トレーニングセンターの場長表彰を受けたほどのホープ。
過去に藤川洋一郎騎手・清水貴行騎手と2度の優勝騎手を送った兵庫からは西川進也騎手。昨年は2勝に終わったが2年目に15勝と進境を見せての参戦。今回71期長期では唯一の出場だけに同期の名誉を掛けてのレースを見せてくれそうだ。
最後は地元高知の新鋭、緒方洋介騎手。高知での同期3人を代表しての登場だ。連対率20.4%、勝率10.6%はいずれも金沢の吉原寛人騎手に次ぐ2位。高知優駿・建依別賞と地元の重賞で2連続2着、遠征騎乗した旭川で堂々白星を掴んでくるなど、この騎手には早くも好レースをしそうなムードが漂っている。地元は宮川実騎手とのダブル出場だが、地の利もあって2人からは目が離せないところだ。
さあ。今年はどんな物語を生むのか全日本新人王。
注目のゲートインは2001年9月10日、お楽しみに!