アスリート作りと題して続けてきたシリーズを再開する。
サラブレッド生産の最大手グループの代表がコメントした事をある競馬誌が引用していた。昨年のJRAG1の内、美浦トレーニングセンターの所属馬が優勝したのがイーグルカフェ唯一頭だったように問題となっている「東西格差」について「美浦にウォーキングマシーンを入れたらどうかな」との内容だ。
もちろん端的な表現であってそれで全てが解決するわけではなかろうが、持ち乗り制によって各馬の運動量が増え、競走成績の格段の向上を見せた栗東組の成功の原因を言い表しているだろう。
かなりしつこくなってきたがそれでも書き続けよう、曳き運動や乗り運動など徹底した運動量の増加がアスリート作りの原点だ。考えてみればすぐに分かる。ボクシング選手の運動量たるや、身長に比して明らかに少ないと思われる体重の階級を選びそこに合わせて絞っていくのだ。結果得られる肉体が厳しい勝負の中でのもうひと踏ん張りを呼び、勝利を呼ぶ。これも繰り返しになるが「長距離適
性」とは別の意味の「スタミナ」が必要なのだ。
極端な例ではオートマチックに15分程度のオーソドックスな調教をこなしてハイそれで終了、洗って飼葉つけて後は馬房の中で過ごすのみという競走馬がいるだろうが、果たしてそれはアスリート足りえるのだろうか。人手不足・脚下の負担、もちろんあるだろう、がしかしオープン馬にも下級条件馬にもアスリートとして鍛えてもらう前提があってこその面白い競馬であり、強い馬作りである事
を見直して行きたい。
とかく表面的なことばかりが先行する世の中であるが、質の良い商品の提供はどの業界でも不況脱出のカギを握るだろう。アスリート作りへの不断の努力を称え、そしてそれが報われるような構造の環境作りを願いたい。
高知競馬場内実況 橋口浩二