アスリート作り?
アスリートたる体力作りはすでに育成段階で始まっている。
距離適性でいう意味とは別の「スタミナ」作りが始まるのだ。それは有酸素運動を繰り返す事によってしか培う事のできない基礎体力、筋肉作りを行っておき、各競馬場やトレセンに入厩した後の本格的な調教に備えるという事だろう。
現在、各地の育成牧場では旧態依然としたやり方から先進の調教方法へと進化が進んでいて、その元となる競馬先進各国の調教方法を含め学ぶ事が多いように思う。その中でもいかに基礎体力作りを重視しているかは我々が注目する点となるだろう。
こういった基礎体力作りは各国で若干事情が異なってくる。ヨーロッパでは基本的に複数の理由から集団調教が行われている。恵まれた自然環境の中、乗り運動を集団で行う事によってマンネリに陥る事なく豊富な運動量を確保できると同時に、馬に集団行動を教え込む事ができる。群れで広大な自然を移動するという元々の野生馬の頃の習性を生かしながら、人間との間のルールを学ばせる。
アメリカでは比較的システマティックな調教方法も取り入れていて、これはいかにもこの国らしい合理主義に基づいている。普通にレースコースのトラックでダク→キャンター→ギャロップを数周するというものだが、クーリングダウンにウォーキングマシンを使うのが日本の地方競馬と違う点だ。まずコースから引き上げてくると馬を洗って馬服を掛け、厩舎の間に多数設置されているウォーキングマシンに繋ぐ。1台に3~4頭周っているが、その間グルーム(厩務員)は次に上がってくる馬を洗ってまたウォーキングマシンに連れて行く。馬の方も慣れたものでマシンのスピードに合わせて落ち着いた様子の運動を続けている。
あの笠松の故・荒川調教師は自費でウォーキングマシンを導入。地方競馬では一頭・一頭の調教に時間をかけられないという現実に立ち向かった。いやそれだけではないだろう、あらゆる悪条件をどうやって改善できるかを考えた人だったと思う。血統面ではワカオライデンという切り札を、調教面や飼葉の工夫、遠征のノウハウ、周囲からは雑音も入ってきたとは思うが、しかしやれば可能である事を示した点が何よりも評価されるべきではないだろうか。
少し話がズレたが、やはり根本の基礎体力作りなくして強い馬作りは望めない。工夫と試行錯誤の中から高知競馬ならではの強い馬作りが始まっていく事を・・・。
高知競馬場内実況 橋口浩二