５月２６日、福山競馬場で行われた全日本タマツバキ記念第２回アラブ大賞典において高知競馬場所属のチーチーキング（別府真司厩舎）が３着となりました。本馬にとっては「全日本」とつくレースで２度目の銅メダルですが、今回は優勝したマリンレオ（愛知）、２着となったペルターブレーブ（上山）、４着のフジナミスペシャル（福山）、５着の御馴染みワシュウジョージ（兵庫）らを向こうに回しての成績ですから、大いに胸を張っていい結果と言えるでしょう。勝負勘を働かせて４角内を突いたという北野真弘騎手も、さすがと唸らせる騎乗だったと事をお伝えしておきます。
さて、今日のタイトルを見て「ああ、あの馬の事かな」と思った方いるでしょ。そうなんです、高知競馬に現れた新星・イブキライズアップ（甲田守厩舎）
についてそろそろご紹介しておかねばなりません。ＪＲＡでは３歳９月に１戦して未勝利。高知に来た頃は蹄の辺りに骨瘤があって大変だったそうですが、蹄鉄が合ったのが良かったのか見事に全快。今年１月３日（花本騎手の誕生日！）の高知デビュー戦こそマチカネガイカの３着に敗れますが、その後はＥ級からＤ級を破竹の７連勝。圧巻だったのは５連勝目となった４月７日のレースで、アラバンサやエイシンミルバンク、エーブダイマジンらを６馬身差で破った事もすごいが、勝ち時計も破格の１分２２秒台（１３００ｍ）。実はこのレースではメンバーが強力だったため、「敢えて力を見せ付けるレースをした（花本騎手）」との事。第４回開催はソエが出たため回避しましたが、４歳にしてソエが出るということはまだまだ本格化は先との見方もでき、化骨が進み筋肉が大人のものに変わればどれだけの馬になって見せるのでしょうか？
私が実況を始めた平成６年から高知競馬に現れた活躍馬には３つのパターンがありました。
１、中央競馬や地方他地区で実績を積んだ上で高知競馬にやってきた馬
（例、ハッコウマーチ・マルカイッキュウ・リバーセキトバなど）
２、高知競馬の生え抜きデビューから全国へ挑んだ馬
（例、イージースマイル・イチヤ・カイヨウジパング・オオギリセイコーなど）
３、他地区未勝利、未出走から重賞競走制覇などの出世を見せた馬
（例、ノルディクダンサー・ウォーターダグ・マチカネホシマツリなど）
果たしてイブキライズアップが３の項目に当てはまるほどの活躍を見せるかどうかは、現時点では誰にも分かりません。しかしその可能性を秘めた馬であることは確かなようです。それは花本正三騎手と甲田守調教師の期待のほどからも伺い知ることができます。
花本正三騎手はこれほど背中のいい馬はこれまで乗ったことがない、と語ります。堅田雅仁騎手が調教に乗るというので、（この背中を）覚えておけよとまで言ったそうです。調教ではうるさいところがあるものの、レースに行くと集中力があるタイプだとか。「どこまでのスケールを考えてますか？」と質問してみたところ高知競馬最大のあのレースの名前も出ましたが、あくまでそれは先々の目標であり、まずはＪＲＡ条件交流（Ｂ級選定）辺りを、との事。
甲田守調教師は「大井競馬場のホワイトエンジェル賞（Ｃ１以下芦毛馬）に出られれば面白いなぁ」とも語ります。騎手としてのデビューの土地である南関東に自慢の馬で遠征したい気持ちがあるのでしょう。やはり競馬というものには「人の気持ちが介在する分」だけのロマンがあります。
イブキライズアップの母イブキプランタンは、中央未勝利から地方競馬の新潟で力を付け、果敢に挑んだ平安Ｓで２着になるというドラマを演じたオーディンの半妹。おぉ、いい感じですねぇ。更に父イブキマイカグラというところに北陽ファームのこだわりも見出されて血統的にもドラマ満載です。祖母のアルズアニーはオーディンの他にもＪＲＡすみれＳ勝ちのバイタルフォースを出しているように繁殖牝馬として大変優秀で、しかも米血・欧血どちらに対してもしっかり底力を下支えできるタイプの血統構成を見せています。
３歳のリンデンスワロー、ミドリノオトメが無事にＣ級古馬相手に勝利を見せて成長力と勢いをアピールした第４回開催。これに４歳のイブキライズアップが連勝を伸ばしていけば近い将来のスターホース候補は層が厚くなります。
各馬とも順調にこの夏を越して、今後の高知競馬を熱くさせてくれる事を…。
