ダービー、ダービー、ダービー!!

 5月28日にJRAのダービー、東京優駿・日本ダービーが行われた。これを皮切りに今週末から地方競馬がダービーウィークと称して各地のダービーを各場で発売する試みを行う。そして高知競馬のダービー、高知優駿・黒潮ダービーも6月4日にゲートインを迎える。

 ダービー花盛りの様相だが、そもそも“ダービー”とは何か?この言葉は競馬のみならず各種競技で使われるようになっていて、例えばサッカーでは同一地区に本拠地を置くチーム同士の対戦をダービーと呼ぶ習慣があるし、また競輪や競艇にもダービーがあったりして、まるで大一番や大レースにはとりあえず“ダービー”とつけるルールがあるかのようである。

 競馬に詳しい方ならダービーが人名であることはご存知だろう。そしてイギリスで生まれたその競走がコイン投げの結果如何ではバンバリーという名前だったこともお馴染みのエピソードである。十八世紀に始まったこの3歳馬による1回勝負のステークス競走はある種の“発明品”で、200年以上に渡ってその名を伝えるだけのインパクトを持つものだった。ダービーがいったいどのような“発明品”なのか、以下簡単に説明しよう。

 競馬が生まれたのは人が馬を乗りこなせるようになった時期と同じ。要するに「俺の馬とお前の馬のどちらが速いか競走しよう」という単純なものだ。それがイギリスにおいては血統管理をすることで競走専門のサラブレッドが生まれ、多頭数競馬のヒートという競走スタイルが現れる。ヒート競走は多頭数において“紛れ”による勝者が出ないように、ある馬が2度勝つことで勝者とするルールを持つ。ただしこの頃は写真判定があるわけではないので、ハナ、頭差のような接戦の場合は同着としてそのヒートを無効とした。実はこれが“デッドヒート”の語源である。よく熱闘、死闘のような意味と取り違えてデッドヒートと表現されることがあるが、語源を知ると使えなくなる言葉だ。

 近代競馬成立の夜明けはセントレジャー将軍、ダービー卿、バンバリー卿らによってもたらされた。まだ若く、能力が未知である三歳馬による1回限りの競走が彼らによって次々と催されたのである。ヒート競走と違ってこれらの競走は主催者にも、観衆にも新鮮な興奮を呼び起こした。賭けの対象としても、競馬のスポーツ性を高める点でも、競馬のレベル向上に大いに貢献しただろう。
この三歳春のまだ未完成な若駒による新しい大レースを巡っては、ダービー卿とバンバリー卿がそれぞれお互いの名前を付けることを主張したが、コイン投げの結果“ダービー”と名づけられた。こうして世界中に“ダービー”という名前が広まった。フランスのジョッキークラブ賞(仏ダービー)、アメリカのケンタッキーダービー。イタリア・ダービー、ドイツやロシア、オーストリアにはたまたスウェーデンやデンマーク、ノルウェー。南アフリカやオーストラリア(AJCダービー)、アラブ首長国連邦はDWCデーに高名なるUAEダービーを。インド、ブラジルにアルゼンチン、チリにもそれぞれのダービーがあり、日本ではG1に格付けされるジャパンダートダービーやダービーグランプリから、地方競馬各地のダービーまで正に津々浦々のダービーが存在する。

 高知競馬の高知優駿・黒潮ダービーは今年で34回目という歴史があるが、平成9年からは三歳三冠路線が整備され、黒潮皐月賞を受けての二冠目というローテーションとなった。その平成9年から4年間は一着賞金が300万円で、その頃は大体スウェーデン・ダービーと同じくらいの賞金だったようだ。むろんJRAのダービーなどとは比べるべくもないが、それでもイージースマイル、カイヨウジパング、マルチドラゴン、オオギリセイコーとその4年間の勝ち馬は錚錚たるメンバーだった。賞金が減額された最近は古馬重賞で勝ち負けというような馬もなかなか現れないが、それでも地元のダービー。やはり将来性のある馬が出てこないかなという希望的視点がこのレースの楽しみである。

 それでは今年の第34回高知優駿(黒潮ダービー)の出走予定馬を紹介する。
(出走馬、および枠順の確定は木曜日)

高知優駿
(サラブレッド系3歳、1900m、定量)

馬名         性 厩舎
 父名        備考
レッドスターリリー  牝・大関吉明
 ラムタラ      黒潮皐月賞4着
ラインフォーク    牡・炭田健二
 グラスワンダー   黒潮皐月賞2着
ダイコービブロス   牡・松木啓助
 ワカオライデン   黒潮皐月賞3着
マルチシークレット  牡・松木啓助
 ウイングアロー   黒潮皐月賞1着
モズセレブ      牝・別府真司
 ラムタラ      前走3歳1組5着 
マルタカヴェルディ  牡・炭田健二
 テンビー      黒潮皐月賞9着
ゴーフライカイト   牝・炭田健二
 デュラブ      黒潮皐月賞6着
ウエスタンブルー   牡・松下博昭
 メジロマックイーン 黒潮皐月賞10着
アイキューマインド  牝・打越初男
 フサイチソニック  黒潮皐月賞8着
キセキノハッスル   牝・田中伸一
 マイネルラヴ    黒潮皐月賞5着

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レッドスターリリー

牝 栗毛
父 ラムタラ
母 プライスリーダー
母父 ワカオライデン
母母 ヒカリリーダー
調教師 大関吉明(高知)
生年月日 2003年4月30日
生産牧場 ヒカル牧場

18戦0勝 
 北海道デビュー、緒戦を含めJRA認定競走で2度の2着があり、2~3着が多い成績だがここまで未勝利。高知転入後も先行力を生かして好走するも、もう一歩で初勝利に手が届かない。黒潮皐月賞は4着だが、ワンパンチ足りない代わりに安定感は抜群で、高知優駿でも上位争いを演じよう。
母は中央1勝、笠松B級勝ちでA級でも走ったプライスリーダー。その全姉が報知杯4歳牝馬特別勝ち、桜花賞4着のライデンリーダー。兄に高知で6勝、黒潮菊花賞3着のミスターマジックがいる。

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ラインフォーク

牡 青毛
父 グラスワンダー
母 トーヨーシービー
母父 ミスターシービー
母母 サンダードーム
調教師 炭田健二(高知)
生年月日 2003年3月16日
生産牧場 オリエント牧場

14戦7勝
 中央3戦未勝利から高知転入。高知では11戦7勝と活躍を見せ、黒潮皐月賞は勝ち馬とタイム差なしの2着と惜しいレースだった。グラスワンダー産駒には小柄でもレース巧者という馬が見受けられるが、この馬も段々とレースセンスを身に付けてきたようだ。もう一段のパワーアップに期待。雨は歓迎のタイプ。
叔父のトーヨーリファールは芝・ダート両方で重賞を勝っている(NZT4歳S、平安S、マーチS)。

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ダイコービブロス

牡 栗毛
父 ワカオライデン
母 パーマネントピース
母父 アイネスフウジン
母母 アイネスブルーム
調教師 松木啓助(高知)
生年月日 2003年4月2日
生産牧場 笹川大晃牧場

18戦4勝
 北海道デビューで2戦して5着まで。高知転入後、年明けの3歳戦ではパワー溢れる走りでトップクラスの存在だったが、春先にはやや不振に。しかし黒潮皐月賞では内々を上昇する赤岡騎手の巧騎乗もあって僅差の3着となり、地力を証明している。最近の走りなら距離伸長に不安はなかろうが、スムーズなレース運びが出来る展開が望ましい。
祖母は輸入馬で、曾祖母の子孫から名牝サルサビル(英1000G、オークス、ヴェルメイユ賞、マルセルブーサック賞、愛ダービーなどを勝つ)が出ている。

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マルチシークレット

牡 鹿毛
父 ウイングアロー
母 アグレーターマジック
母父 Slewpy
母母 In My Favor
調教師 松木啓助(高知)
生年月日 2003年4月22日
生産牧場 大和牧場

5戦2勝
 今年3月に大井デビュー、2戦していずれも後方から差を詰め3着に食い込んでいる。高知では緒戦の1000m戦を豪快に差しきると、2戦目の黒潮皐月賞を競り勝って重賞初制覇。ただしこのレースでは折り合いを欠くシーンがあった。中間に微熱が出るアクシデントがあったようだが、父ウイングアロー譲りの豪快な決め手を発揮するには心身ともに万全の態勢を整えたいところ。底力はメンバー中でも屈指だけに二冠に期待だが…。
曾祖母の産駒にアジュディケーティングとTime for a Change がいて、更にこの一族からはアレアズマ(NTV盃)やドラールアラビアン(大井記念勝ち、帝王賞G1で2着)が出ている。

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モズセレブ

牝 鹿毛
父 ラムタラ
母 イナズマヒバナ
母父 ミルフオード
母母 ポーロニアオリオン
調教師 別府真司(高知)
生年月日 2003年4月3日
生産牧場 小泉牧場

14戦1勝
 兵庫でデビューし、緒戦の認定競走で2着するも未勝利で高知に転入。2戦前の3歳2組で好位から抜け出し初勝利。前走は上位に差を付けられたが、果たして重賞制覇で“セレブ”となれるか?
叔父に中央5勝のナナヨーオリオン。叔母イナズマクロスが中山クイーンSの勝ち馬。

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マルタカヴェルディ

牡 黒鹿毛
父 テンビー
母 イズミキソジ
母父 ステイールハート
母母 キソジ
調教師 炭田健二(高知)
生年月日 2003年4月19日
生産牧場 岡裕

13戦2勝
 北海道デビュー、4戦目の1000m戦で初勝利をマーク。高知転入後は初戦の3歳1組を6着ながら2戦目には同クラスを勝っているが、その後も好走・凡走の繰り返しで、非常に能力を掴みづらい成績を残している。
黒潮皐月賞9着は絶対能力の反映とは言えず、またある時に人気薄で好走する“穴馬”資質を持つ馬のようだ。ペース、展開などによって能力を発揮すると上位を争っても驚けない。
祖母キソジはニットウチドリが勝った桜花賞で3着となった馬。

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ゴーフライカイト

牝 鹿毛
父 デュラブ
母 ロマンスカイ
母父 バンブーアトラス
母母 アマツバメ
調教師 炭田健二(高知)
生年月日 2003年4月14日
生産牧場 小島牧場

15戦3勝
 北海道未勝利から高知転入。溜めれば伸びる末脚でここまで3勝をマークしている。黒潮皐月賞では6着だが、距離伸長でどこまで上位勢力に迫れるか?
兄は王冠賞、道営記念などで2着となったアトラスオーザと、東京湾カップテレビ埼玉杯を勝ったムテキボーイ。これら地方重賞で活躍する兄達の存在も心強い。

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ウエスタンブルー

牡 芦毛
父 メジロマックイーン
母 ウエスタンミワ
母父 ウエスタンウインド
母母 ニコーカオリ
調教師 松下博昭(高知)
生年月日 2003年3月31日
生産牧場 ファーミングヤナキタ

16戦1勝
 北海道でデビューして緒戦のJRA認定競走を3着するも、未勝利で高知へ転入。初勝利は転入後7戦目にあたる1000m戦。これを好位から抜け出して快勝した。
兄シャーペンアイルは王冠賞、北海優駿勝っている重賞ウイナーで、現在高知で走っている。父は先日亡くなったメジロマックイーンで、母系はチップトップ系。

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アイキューマインド

牝 鹿毛
父 フサイチソニック
母 サンクスマインド
母父 リードワンダー
母母 ミスオシン
調教師 打越初男(高知)
生年月日 2003年5月13日
生産牧場 ヒダカフアーム

17戦1勝
 北海道デビュー。5着が3度あるものの未勝利で高知転入。昨年12月の転入3戦目にはラインフォークを抑えて初勝利。黒潮皐月賞では先行策から後退して8着も、その先行力が活路を開くか?
父フサイチソニックはデインヒル産駒で神戸新聞杯を勝っている。母サンクスマインドは中央2勝馬で、曾祖母はイギリスからの輸入馬。

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キセキノハッスル

牝 黒鹿毛
父 マイネルラヴ
母 マイネカンパーナ
母父 コタシャーン
母母 マイネミレー
調教師 田中伸一(高知)
生年月日 2003年6月10日
生産牧場 ビッグレッドファーム

19戦1勝
 北海道でデビュー。JRA認定競走を2戦して5,6着。高知転入後、道中で一瞬の脚は見せるもののなかなか勝ち星に繋がらなかったが、4月2日の3歳2組で待望の初勝利。マイネルラヴ産駒らしい活力を見せ始めていて、黒潮皐月賞では5着となっている。成長ぶりからも今後に期待の1頭。
母系はマイネルブライアン、マイネルデュプレ、マイネルガーベらを出す一族。フロリースカップ系。

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 さて枠順の発表を明日に控え、いよいよ高知優駿のゲートインが近付いてきた。今年の高知の3歳馬で最も将来性がある馬は?あるいは完成度が高い馬は?
世界中に存在する“ダービー”が高知にもある。そんな沢山のダービーに夢馳せながら、“黒潮ダービー”を楽しんで欲しい。

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