「第10回黒船賞」出走予定馬

 例年よりも早く春の訪れを感じても、“温暖化”という言葉を前にしては天の恵みと素直に喜べない。まさか本当にそんな時代が来るとは思わなかったが、“まさか”はいつも当たり前のような顔をしてやってくるものだ。

 今年で10回目を迎える「農林水産大臣賞典 黒船賞GIII」。過去のこのレースの想い出はいつも、冬の空気が弛緩して優しくソメイヨシノを散らすイメージと共に蘇る。9年前のその日、リバーセキトバが勝ったレースを確かに見た。ひょっとして見せ場はあるか…、そんな予感のようなものはあったかもしれない。しかし3コーナーで明らかに“勝つ馬の動き”をしてみせる青い勝負服を確認しても、まだ予感と現実を同化させられない自分がいる。
そんな自分の躊躇を蹴散らすように、蹄音高らかに進軍を続けるリバーセキトバ。勝利を告げる北野真弘騎手のガッツポーズは“それが起きた”ことをその場にいた全員に理解させるに十分な迫力であった。

 あれから9年。色々な“まさか”がやってきた。良い“まさか”よりは悪いそれが多いのは致し方ないのかもしれないが、一世代と呼ばれるような時間の枠を超えると、当時の人に話してもにわかに信じてもらえないような事が多々起きたなぁと振り返る事が出来る。本来は“まさかの坂”などスポーツの世界だけに留めて、現実社会はゆるやかに、たおやかに、人に優しいものであって欲しいものだが…。

 さてそれでは本日出揃った、四国唯一のダートグレード競走「黒船賞」の出走予定馬を紹介していこう。まずはJRAの4頭である。

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ニホンピロサート
(牡9歳 黒鹿毛 栗東・目野哲也厩舎)

父スターオブコジーン
母ニホンピロポリーナ
母父ニホンピロウイナー
51戦13勝
負担重量57kg 

主な勝ち鞍
03年 ガーネットS(G3)
04年 プロキオンS(G3)
   サマーチャンピオン(G3)
05年 さきたま杯(G3)
   兵庫ゴールドトロフィー(G3)
備考 05年東京盃(G2)などダートグレードで2着3回
   黒船賞は昨年が初出走で3着   

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ノボトゥルー
(牡11歳 鹿毛 栗東・森秀行厩舎)

父Broad Brush
母Nastique
母父Naskra
79戦11勝
負担重量59kg 

主な勝ち鞍
01年 根岸S(G3)
   フェブラリーS(G1)
02年 とちぎマロニエC(G3)
   兵庫ゴールドトロフィー(G3)
03年 さきたま杯(G3)
04年 とちぎマロニエC(G3)
備考 他にダートグレードの2着が11回など
   黒船賞は02年から昨年まで5年連続出走で7、2、2、2、4着

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メイショウバトラー
(牝7歳 鹿毛 栗東・高橋成忠厩舎)

父メイショウホムラ
母メイショウハゴロモ
母父ダイナガリバー
27戦8勝
負担重量55kg 武豊騎手 

主な勝ち鞍
04年 小倉大賞典(G3)
06年 プロキオンS(G3)
   サマーチャンピオン(G3)
   シリウスS(G3)
備考 昨年ダート戦線に路線変更して重賞3連勝
   その勢いでJBCマイル(G1)も2着。黒船賞は初参戦

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リミットレスビッド
(牡8歳 栗毛 栗東・加用正厩舎)

父サンデーサイレンス
母エリザベスローズ
母父ノーザンテースト
35戦10勝
負担重量58kg 

主な勝ち鞍
06年 ガーネットS(G3)
   根岸S(G3)
   東京盃(G2)
   兵庫ゴールドトロフィー(G3)
備考 こちらも昨年1月にダート戦線へ向かっていきなり2連勝
   東京盃(G2)を勝ってJBCマイル(G1)を3着、黒船賞は初出走

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 過去9回中8度の優勝を誇るJRA勢は今年も豪華メンバーとなった。
ステップとしてもっとも多く活躍馬を送り込むフェブラリーS(G1)からは8着のリミットレスビッドと10着のメイショウバトラーの2頭がエントリー。
特に高知競馬の馬場形状を考えれば、今回の紅一点メイショウバトラーがフェブラリーSで見せたパフォーマンスは興味深い。3番手の好位追走から直線に向いて先頭に並んでいこうとするあたりは見せ場十分。結果的に勝ったサンライズバッカスを始め上位に食い込んだ馬は中団・後方から直線で決め手を炸裂させているだけに、残り1ハロンまで粘った脚は印象的だ。高知コースを手の内に入れている武豊騎手を確保して55kgはいかにも恵まれたか。
 
 リミットレスビッドはマイルだと少し長い印象で、千四なら切れが増す。
実力や実績は申し分なく、東京盃と黒船賞には好成績の相関関係もある。
高知コースに関しては、まくる形の競馬が出来ればこなせるはず。

 ニホンピロサートは昨年3着。勝負所でややもたついて差し遅れたが、地方の右回り1400m戦の成績は抜群。1月の根岸S(G3)での3着は古豪健在を大いにアピールしている。

 ノボトゥルーはなんと6年連続の出走になる。昨年10月以来の休み明けでもあり、11歳という年齢を考えれば大きな上積みは考え難い所だが、一昨年は人気を落としながらも2着に追い込んでいる事を忘れてはならない。
そして最も多く黒船賞に出走してくれている点にも敬意を表したい。

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 さあ、続いてはこれからの期待馬が揃う地方他地区の4頭である。

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ロッキーアピール
(牡9歳 鹿毛 川崎・山崎尋美厩舎)

父Valid Appeal
母Dame’s Rocket
母父Timeless Native
52戦10勝
負担重量57kg 山崎誠士騎手 

主な勝ち鞍
04年 さきたま杯(G3)
05年 アフター5スター賞
06年 かきつばた記念(G3)
備考 3歳時に中日スポーツ賞ファルコンS(G3)で2着など芝でも活躍
   黒船賞は山崎誠士騎手とのコンビで05年3着、06年2着と好成績を残す

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キングスゾーン
(牡5歳 黒鹿毛 名古屋・原口次夫厩舎)

父キングヘイロー
母マチスマリン
母父Al Nasr
35戦16勝
負担重量56kg 安部幸夫騎手

主な勝ち鞍
06年 オータムスプリントカップ
備考 昨秋に重賞初制覇。JBCマイル(G1)8着だが、浦和記念(G2)で
   山本茜騎手を背に2着と大健闘。先日の佐賀記念(G3)も3着と充実 

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ベストタイザン
(牡5歳 鹿毛 兵庫・斎藤裕厩舎)

父ジェニュイン
母ベストフルーツ
母父アスワン
35戦10勝
負担重量56kg

主な勝ち鞍
07年 サンテレビ賞(オープン特別)
備考 今年の兵庫を引っ張っていきそうな存在。まだ重賞勝ちはないが、
   06年12月の兵庫GT(G3)でリミットレスビッドに0.5秒差4着

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ジョイーレ(牡4歳 鹿毛 兵庫・曾和直榮厩舎)

父メイセイオペラ
母マツクスコルテイ
母父トウシヨウボーイ
18戦8勝
負担重量56kg 

主な勝ち鞍
06年 摂津盃
   姫山菊花賞
備考 2歳時に兵庫ジュニアGP(G3)で2着、3歳時には兵庫CHS(G3)
   で3着といった堂々たる成績を残している

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 過去2年、黒船賞を大いに沸かせたロッキーアピールが3年連続の登場。
山崎誠士騎手の騎乗を毎年楽しめるのが2度美味しいポイントだ。昨年は黒船賞2着の後、かきつばた記念(G3)を逃げ切って地力を証明。JRAのプリサイスマシーン以下を抑えたのだからやはり地方右回り千四という条件は強い。ただし今回はノボトゥルーと同じく長期休養明け。状態面に注意。

 リファールの同系配合が目立つキングスゾーンはダートグレード戦線でも大変目立つ存在だ。重賞初制覇が昨秋、返す刀で浦和記念2着、佐賀記念3着とは立派な成績。好位で粘る脚質にも安定感がある。速い流れとなった場合にどんな競馬となるか?その辺りが好走のカギとなろう。

 筆者が実際に園田競馬場で見てきたばかりなのはベストタイザン。ロードバクシンの引退レースで、同馬の直後を楽な手応えで追走し、直線で抜けて快勝。5歳になってここで本格化してきた感がある。年末に兵庫GTで4着しており、今の充実振りなら期待は大きい。

 ジョイーレは兵庫デビューの4歳馬だが、ここまでの18戦中、重賞をすでに10回戦ってきたという経験の持ち主。地元ではあるがグレード競走も3度戦い2着、3着、7着だから上々の成績だ。やや実戦間隔が開いたが、若さに加え、強敵と戦ってきた強みを生かしたい。

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 それでは最後にTR3戦によって選ばれた地元・高知の4頭を。

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ストロングボス
(牡9歳 鹿毛 高知・打越初男厩舎)

父Capote
母Spring Valley
母父Affirmed
71戦36勝
負担重量56kg 宮川実騎手

主な勝ち鞍
04年 建依別賞
05年 二十四万石賞
   建依別賞
備考 地元TR3戦は2着、4着、3着。勝ちきれぬも安定感は随一
   黒船賞は05年12着、06年9着。04年には南部杯(G1)に出走(10着)した

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チェリーキング
(牡5歳 栗毛 高知・大関吉明厩舎)

父ミシックトライブ
母トウジツルビー 母父イエローゴツド
56戦11勝
負担重量56kg 西川敏弘騎手

主な勝ち鞍
06年 福山・高知サラ交流特別(特別戦)
備考 地元TR3戦目で鬼脚を見せて2着となり、滑り込みで出走へ
   近走は短距離戦への対応を見せつつある
  
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マリスブラッシュ
(牡6歳 鹿毛 高知・田中譲二厩舎)

父スピニングワールド
母シネマライフ
母父マルゼンスキー
68戦11勝 負担重量56kg 

主な勝ち鞍
07年 だるま夕日特別(黒船賞TR、オープン特別)
備考 地元TR3戦のうち2レースに勝って堂々の出走
   昨年の黒船賞で6着とツボにはまると潜在能力は高い

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マルチロードスター
(牡5歳 鹿毛 高知・松木啓助厩舎)
父ゼネラリスト
母シルキールージュ
母父ダンサーズイメージ
34戦7勝
負担重量56kg 
主な勝ち鞍
07年 ガーネット特別(オープン特別)
備考 2歳時に金沢・兼六園ジュニアC3着など重賞で活躍。高知では重賞勝ちはないものの近走力を付けてA級選抜を勝利している

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 黒船賞3度目の登場となるストロングボス。建依別賞を2連覇しているようにこの距離に関しては常に上位勢力を形成してきた。黒船賞では05年が落鉄のアクシデントに泣き、昨年は好位追走から「馬がブルーコンコルドを意識して」やや掛かってしまったと聞いている。常に脚部不安と戦っているだけに“万全”の態勢とはいかないだろうが、少なくとも現状の持てる力を全て発揮できるレースとなることを祈りたい。

 チェリーキング陣営は常々「この馬は長い距離がいいかも」と言い続けて来た。
福山での交流戦はそんな望んだ舞台だったわけだが、見事結果を出してマイネルリチャード以下を差し切った。2番人気に推された高知県知事賞は大敗したが、その後は短距離用の調教に切り替えたそうで、前走のマイル戦で見せた脚が本番で披露できるようだと楽しみだ。

 マリスブラッシュはツボにはまると見事なレースをし、一方で力なく敗れる時もあるというムラ駆けタイプ。しかし昨年の黒船賞で6着しているように、田中譲二調教師は「昨年も今年も、この時期になると調子が良いんです」と胸を張る。
ここに来ての2連勝はいい流れの証。ハイペースの中団辺りまでを追走できればひと脚は見せるはず。

 マルチロードスターは今年1月のガーネット特別で初めて高知のオープンクラスを制した新勢力。だが2歳時には金沢で結果を出しているのだから、ようやく力を発揮し始めた所とも言えるだろうか。ポイントは折り合いだったが、抑えずに行かせる戦法が功を奏した。本番ではさすがに先行策となるかどうかだが、速い流れの方が結果に繋がる可能性も。 

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