3月21日の“高知競馬春祭り”のもう一方の看板が今年で21回目を迎える「全日本新人王争覇戦競走」だ。昨年の第20代新人王を射止めたのが、地元・高知の森井美香騎手だったのはとても印象的だったが、今年は果たして?
まず過去の地区別優勝成績を挙げてみる。
北海道 5勝
松井孝仁、藤川直人、山田和久、渋谷裕喜、伊藤千尋
兵庫 3勝
藤川洋一郎、清水貴行、西川進也
荒尾 2勝
後藤孝鎮、矢野猛
高知 2勝
西内忍、森井美香
名古屋 1勝
安部幸夫
川崎 1勝
岡村裕基
福山 1勝
久保河内健
岩手 1勝
村上忍
浦和 1勝
木村龍二
佐賀 1勝
下條知之
新潟 1勝
熊木良介
JRA 1勝
柴原央明(栗東)
圧倒的に北海道の騎手が勝っていて、20回中5度の制覇である。
未勝利の地区で今回の参加があるところは金沢・大井で、更にJRA美浦を加えた3人の騎手には“地区初勝利”が懸かる。もっとも騎乗馬が抽選で決まる上に、一発勝負であることを考えればそれほど勝ち負けにこだわる必要はない。
それでもしゃにむに勝利を目指す若武者達の姿は毎年感動を呼ぶ。また出場騎手のその後の活躍を考えても、大変興味深いレースであることに変わりないだろう。
さあそれでは改めてご紹介しよう。いずれも各地区で優秀な成績を残して推薦された今後の日本競馬を盛り上げていくであろう、12名の若武者達である。
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「第21回全日本新人王争覇戦競走」出場騎手
(成績は2007年3月12日現在)
☆JRA美浦
塚田 祥雄 (つかだ よしお)
1986年6月29日生(20歳)
初騎乗2005年3月5日(2年)
通算成績 891戦 61勝
(勝率.062 連対率.118)
(備考)2006年は44勝と一気の飛躍
☆JRA栗東
鮫島 良太 (さめしま りょうた)
1987年2月4日生(20歳)
初騎乗2005年3月5日(2年)
通算成績1186戦 90勝
(勝率.076 連対率.151)
(備考)06年小倉2歳Sをアストンマーチャンで制す
05年中央競馬関西放送記者クラブ賞(関西所属新人敢闘賞)
父は佐賀の鮫島克也騎手
☆北海道
桑村 真明(くわむら まさあき)
1987年3月26日生(19歳)
初騎乗2005年4月20日(2年目)
通算成績 666戦 34勝
(勝率.051 連対率.126)
(備考)東京都千代田区出身
☆岩手
高橋 悠里(たかはし ゆうり)
1987年4月14日生(19歳)
初騎乗2005年4月16日(2年目)
通算成績 839戦 49勝
(勝率.058 連対率.118)
(備考)佐賀での武者修行を経験
☆岩手
山本 聡哉(やまもと としや)
1988年1月30日生(19歳)
初騎乗2005年4月16日(2年目)
通算成績 568戦 28勝
(勝率.049 連対率.118)
(備考)趣味はスキー、兄も岩手所属の騎手
☆金沢
竹田 吉孝(たけだ よしたか)
1986年5月16日生(20歳)
初騎乗2004年4月11日(3年目)
通算成績1126戦 35勝
(勝率.031 連対率.085)
(備考)出身は山形県、名古屋の竹田吉秀騎手とは双子の兄弟
☆浦和
山崎 真 (やまざき しん)
1987年5月20日生(19歳)
初騎乗2005年10月19日(2年目)
通算成績 117戦 6勝
(勝率.051 連対率.077)
(備考)乗馬クラブで馬に触れ合い騎手を目指す
☆大井
赤嶺 亮 (あかみね りょう)
1986年8月13日生(20歳)
初騎乗2005年10月30日(2年目)
通算成績 382戦 18勝
(勝率.047 連対率.118)
(備考)父は赤嶺本浩調教師
☆名古屋
竹田 吉秀(たけだ よしひで)
1986年5月16日生(20歳)
初騎乗2005年4月18日(2年目)
通算成績1249戦 26勝
(勝率.021 連対率.070)
(備考)出身は山形県、金沢の竹田吉孝騎手とは双子の兄弟
☆兵庫
武藤 隆一(むとう りゅういち)
1986年4月7日生(20歳)
初騎乗2004年4月20日(3年目)
通算成績 623戦 26勝
(勝率.042 連対率.079)
(備考)厩務員の家庭に生まれて騎手を目指す、出身は佐賀県
☆佐賀
青柳 健一(あおやぎ けんいち)
1987年7月30日生(19歳)
初騎乗2005年5月1日(2年目)
通算成績 651戦 33勝
(勝率.051 連対率.123)
(備考)下條知之騎手以来の佐賀勢優勝目指す
☆荒尾
田中 良明(たなか よしあき)
1987年2月12日生(20歳)
初騎乗2004年4月28日(3年目)
通算成績 660戦 78勝
(勝率.118 連対率.217)
(備考)勝率・連対率が今回の参加騎手のトップ
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成績で目を惹くのは荒尾の田中良明騎手。3年目ということを差し引いても78という勝ち星と勝率・連対率は素晴らしい。特に勝率だろうか。騎手の成績を参照するときに勝率1割というのはひとつの目安になる。
JRAの2人の成績も相当なもの。塚田祥雄騎手も鮫島良太騎手も例年の水準を大きく越えてきた。鮫島良太騎手には佐賀の3000勝ジョッキーである、鮫島克也騎手のご子息という大きな話題も。以前からこの新人王には「家族の物語」という側面があると書いてきたが、今年もぜひ12名の騎手の12の家族に注目して頂きたい。
そこでぜひご紹介したいのが金沢の竹田吉孝騎手と、名古屋の竹田吉秀騎手。所属地区とデビュー時期は違うが、共に出身が山形で同じ姓で生年月日が全く同じ。これは、ということで地方競馬全国協会に問い合わせてみると広報室の優しいお姉様から「やはりそうですね、双子ですね」とのお返事を頂けた。
新人王戦史上初となる双子ジョッキー同時騎乗の実現だ。ちなみに地全協の資料に残る双子ジョッキーは、竹田兄弟を含めて5組の例がある。その資料をFAXで送って頂いたので(お姉様に重ねて感謝)紹介しよう。
1、金沢 道久 直 引退
金沢 道久 勉 引退
2、兵庫 松本心平 引退 生年月日 S54.11.22
兵庫 松本良平 引退
3、金沢 野田幸雄 現・調教師 生年月日 S29.3.24
金沢 野田哲雄 現・厩務員
4、金沢 竹田吉孝 現役 生年月日 S61.5.16
愛知 竹田吉秀 現役
5、中央 水野貴広 現・調教師 生年月日 S47.11.2
浦和 水野貴史 現役
驚くのは5組中3組までが兄弟揃ってか、あるいは1人が金沢の所属であること。実は双子ジョッキーのメッカであることを発見…。それはともかく竹田兄弟の場合はデビュー時期が1年違うので、今回の新人王に揃って出場というのはかなり奇遇なことではないだろうか。天の配剤を想いつつ、2人が共に大活躍をして他の騎手から「ちょっと、ちょっとちょっと」という声が上がるシーンも…(苦笑)。
桜の時期に行われるようになって4度目となる新人王。一発勝負であるからこそ各馬を懸命に追うレース振りが今年も楽しみだ。今年も12名の新人騎手、そして12組(11組)の家族の物語に大きな声援を送りたい。